「恋人はアンバー」©Atomic 80 Productions Limited Wrong Men North 2020, All rights reserved.

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2022.11.06

「恋人はアンバー」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1995年、アイルランドの田舎町。自身がゲイだと認められずにいる高校生のエディ(フィン・オシェイ)と、レズビアンであることを隠しているクラスメートのアンバー(ローラ・ペティクルー)。2人は家族や同級生に同性愛者だと知られないまま卒業するために、恋人のふりをする。

同性愛が違法ではなくなってから2年後のこと。描かれる学校や家庭の日常は想像以上に保守的で、性的指向に悩みながら軍隊を目指すエディの葛藤や恐怖は、察するに余りある。きゃしゃな彼が懸垂する場面のけなげさに胸が詰まる。一方、時に爆発しそうになるエディの気持ちに寄り添い、衝突しながらもリードするアンバーが頼もしい。

同級生たちの思慮の足りなさにあきれてしまう場面もあるが、あれこそがエディとアンバーの目に映る現実なのだろう。エンディングの決断とつながり、一歩を踏み出す姿には爽やかな感動がある。デイビッド・フレイン監督。1時間32分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

LGBTQモノは数あれど、ゲイであることを「認めたくない」エディと「知られたくない」アンバーの組み合わせが新鮮。アイルランドの片田舎で窮屈な青春を送る2人の精いっぱいを、おかしく切なく描き出す。彼らの周りの溝を、安易に埋めようとしない結末が味わい深い。(勝)

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