「やまぶき」©2022 FILM UNION MANIWA  SURVIVANCE.

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2022.11.06

特選掘り出し!:「やまぶき」 諦めず咲かせる未来

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

日の当たりにくい場所にしか咲かない花をモチーフに、資本主義や家父長制に翻弄(ほんろう)されながらも、ささやかに抵抗する人々に焦点を当てた。岡山・真庭でトマト農業を営む山崎樹一郎監督の長編3本目。真庭を中心に16ミリフィルムで撮影を行った。5月にあったカンヌ国際映画祭ACID部門に日本映画として初選出されるなど、海外の注目も高まっている。

韓国で乗馬競技のホープだったチャンス(カン・ユンス)は借金を負い、真庭の採石場で働いている。刑事の父と暮らす女子高生、山吹(祷キララ)は戦場ジャーナリストだった亡き母の思いを受け継ぎ、交差点でサイレントスタンディングを始めた。小さくても声を上げ続ければ、誰かとつながれるかもしれない。山吹の思いは周囲を静かに巻き込んでいく。

チャンスは正社員登用というタイミングで不幸な事故に見舞われ、交差点に立つ山吹には無遠慮なまなざしが注がれる。社会の大きな仕組みの中で個人の存在はかき消されがちだが、人生の行き止まりのような状況でもがくチャンスと山吹が、未来を諦めないことの大切さを体現していた。

1時間37分。11月5日から東京・ユーロスペース、同12日から大阪・シネ・ヌーヴォほか順次公開。(倉)

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