ひとしねま

2022.10.29

データで読解:邦画アニメ隆盛の陰で

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

秋も深まる中、これまでの実績や個々の作品の浸透度調査を踏まえた今年の年間映画総興行収入は、新型コロナウイルス禍前とほぼ同等と予想され、「復興」を成し遂げる見込みだ。

けん引するのはコロナ禍前よりも拡大した邦画アニメである。土日2日間で興収3.2億円を記録した「劇場版ソードアート・オンライン」が1位の好スタート。「ONE PIECE FILM RED」が興収170億円を超え、今後も新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」や、人気漫画「SLAMDUNK」の劇場版など期待作が控える。

人気アニメ作品の多くは、テレビ、漫画、ゲームなどメディアを横断した多様で多くのコンテンツが提供される。継続的に高い頻度のコミュニケーションが、「大きく」「熱く」「固い」ファン層を形成し、彼らが劇場版をイベントとして楽しむ。

洋画作品の多くがそうであるように、製作に年数のかかる映画のみでの展開では、構造的にこうした取り組みは難しい。しかし複数の作品が連なって、ジャンルでファン層を形成することは可能ではないか。邦画実写、洋画はコロナ前にまだ戻っていない。市場全体で復興を超えて発展を成し遂げるためにはファン層の再形成が必要である。(GEM Partners代表・梅津文)

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