2008年来日時のハリソン・フォード=勝田友巳撮影

2008年来日時のハリソン・フォード=勝田友巳撮影

2023.6.07

ハリソン・フォード会見記 19年ぶりでも「衣装を着たらインディに戻った」

インディ・ジョーンズが帰ってくる! 15年ぶりの新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が6月30日に公開される。ハリソン・フォードも健在で、これが〝最後の〟大冒険。第1作「レイダース 失われた聖櫃(アーク)」の公開から42年、インディ・ジョーンズの活躍を、ひとシネマがまるっと解説します。

勝田友巳

勝田友巳

2008年6月、「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」公開に合わせて、主演のハリソン・フォードが来日、単独インタビューした。製作総指揮のジョージ・ルーカスやキャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャルら製作陣も同行、東京・六本木のグランドハイアット東京で記者会見と取材という段取りだ。当時はまだ中国の映画市場は今ほどではなく、日本がアジアの稼ぎ頭。ハリウッド大作のご一行がこぞって来日したものだった。


ハリソン・フォードとジョージ・ルーカス=細田尚子撮影

ハリウッドの大物が続々来日

この年だけでも「最高の人生の見つけ方」でジャック・ニコルソン、「ノーカントリー」のハビエル・バルデム、「幸せの1ページ」のジョディ・フォスター、「ブラインドネス」のジュリアン・ムーアらが来日。中でも「インディ・ジョーンズ」は19年ぶりの新作公開、フォードはインディ・ジョーンズとしては初来日だったから、注目度も高かった。
 
シャツにジャケットといういでだち。ホテルの一室で次々とインタビューをこなしていたが、疲れたそぶりも見せずさっそうと現れた。にこやかで落ち着いた雰囲気である。
 

脚本に納得するまでに時間かかった

――19年ぶりのシリーズ復活ですね。

もちろん、私も再開させたかったけれど、前の3作より出来の悪い作品にはしたくなかった。スティーブンとジョージ、それに私の3人が納得する脚本でないとね。候補は3、4本あったけど、面白さが十分ではなかったり、やり過ぎだったり。今回の脚本は十分によかったよ。

ーー久しぶりで、戸惑いはなかったですか。

ジョーンズの衣装を着けたら、たちまち感覚が戻った。体のサイズは20年前と変わらない。週に4、5回はプロのコーチとテニスをしているし、週3回ジムで集中トレーニングしているから。撮影前にはケガしないように、念入りに運動もした。アクションは「身体演技」、自分でこなしているんだ。
 

「ジョーンズはヒーローじゃないよ」

――確かに、体形はそのままです。ハリソンさんといえば、インディ・ジョーンズと「スター・ウォーズ」のハン・ソロで一躍知られるようになりました。頼りになるヒーローのイメージが定着しています。
 
インディ・ジョーンズの成功で自分のキャラクターが決まったのは確かだけれど、それは映画の中だけの話。自分ではヒーローの柄だと思っていない。
 
第一、ジョーンズは本当のヒーローじゃないと思うね。ヒーローっていうのは危険をかえりみず、他人のために無私の行動を起こす人のこと。彼は自分がしでかしたことの尻ぬぐいをしているだけさ。
 

年齢感じさせぬオーラ

ハリウッドの俳優は新作公開の度に世界中を飛び回り、無数のジャーナリストと会って取材慣れしている。同じことを100万回くらい聞かれているに違いないのに、「いい質問だね」といった顔でしっかり答えてくれる。中には無愛想で取材しにくい俳優もいるけれど、取材も仕事のうちというプロ根性がさすがである。
 
取材中、スピルバーグとルーカスとの仕事が楽しくて仕方ないという話を一くさり。冗舌ではないが機嫌良く、取材に応じてくれた。翌月には66歳になるという時期だったが年齢を少しも感じさせず、あたりを明るくさせるオーラを放出。何より、あの渋い声が印象的だった。
 

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。