第76回カンヌ国際映画祭で記者会見する「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」のマッツ・ミケルセン、ハリソン・フォード、ジェームズ・マンゴールド監督=2023年5月19日、勝田友巳撮影

第76回カンヌ国際映画祭で記者会見する「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」のマッツ・ミケルセン、ハリソン・フォード、ジェームズ・マンゴールド監督=2023年5月19日、勝田友巳撮影

2023.5.20

「最後を飾るにふさわしい物語。本物の感情と人生の重みがある」 ハリソン・フォード大いに語る 「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」カンヌで初披露

インディ・ジョーンズが帰ってくる! 15年ぶりの新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が6月30日に公開される。ハリソン・フォードも健在で、これが〝最後の〟大冒険。第1作「レイダース 失われた聖櫃(アーク)」の公開から42年、インディ・ジョーンズの活躍を、ひとシネマがまるっと解説します。

勝田友巳

勝田友巳

第76回カンヌ国際映画祭で、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が世界初披露された。15年ぶりの新作にして、シリーズ最後の作品。カンヌ入りしたハリソン・フォードに名誉パルムドールを贈る歓迎ぶり。ベールを脱いだ最新作の中身は――。

記者会見するハリソン・フォード、マッツ・ミケルセン、フィービー・ウォーラー・ブリッジら

 

時間を支配する秘宝をめぐりナチス残党と対決

映画の幕開けは第二次世界大戦中、ジョーンズはナチスが手に入れた秘宝を運送する列車に乗り込み、秘宝を奪還しようと大立ち回り。高速で疾走する列車の中での、派手なアクションから始まる。時は流れ、アポロ11号が月面着陸した1969年。大学を退官したジョーンズを友人の娘(フィービー・ウォーラーブリッジ)が訪ねてくるところから動き出す。秘宝には時間を支配する力があるとされ、米航空宇宙局(NASA)に潜り込んだナチス残党の科学者との争奪戦が繰り広げられる――。アクションまたアクションはシリーズおなじみ、荒唐無稽(むけい)なクライマックスもさらにパワーアップ、ジョーンズは期待を裏切らない大活躍を見せてくれる。

ハリソン・フォードとジェームズ・マンゴールド監督
 

名誉パルムドールに「感動した」

18日夜の公式上映に現れたフォードは、名誉パルムドールのトロフィーを手に「感動しました。死ぬ前に人生の走馬灯を見ると言うけれど、今素晴らしい瞬間が目の前を通り過ぎていった思いです。妻が情熱と夢を支えてくれました。(客席に向かって)みなさんのことも愛しています」と感激の面持ちで語りかけ、喝采を浴びていた。
 
19日にはフォードと、元ナチスの科学者を演じたマッツ・ミケルセン、ジョーンズを冒険に巻き込む友人の娘を演じたフィービー・ウォーラーブリッジ、ジェームズ・マンゴールド監督らが記者会見した。

記者会見するフィービー・ウォーラーブリッジ
 
フォードは名誉パルムドールに「映画のコミュニティーの歓迎がうれしかった。素晴らしい気分だった」と振り返った。
 
「運命のダイヤル」は「5作を締めくくって最後を飾るような物語にしたかった。ジョーンズに人生の重みや本物の感情を与えたかった」と語る。「これで最後なのはどうして」と聞かれたフォードは「(自分の体を示して)これが答えにならないかな。座って休む時期なんだ」。
 

「35年前の自分を見ている気分」

映画には、コンピューターグラフィックス(CG)の助けを借りて、若き日のインディも登場。フォードは「35年前の自分を見るようだったな。でも技術は本物の物語、本物の感情に支えられなかったらゴマカシに過ぎない。この映画は丹念に作られていたと思う」。ただ「これからもCGの若いジョーンズが登場する作品はできるのか」との質問には、プロデューサーのキャサリーン・ケネディが「ありません」と即答。

 
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

「嫌われ役でも夢のよう」 マッツ・ミケルセン

前4作を監督したスティーブン・スピルバーグが製作に回り、監督はジェームズ・マンゴールドに。「シリーズへの期待はとてつもなく大きく、とてもすべてを満足させることはできない。引き受けるにはものすごい責任を背負わなければいけなかった。伝説的なキャストとクルーと仕事をして、しかも自分の映画と思えるようにもしたい。尻込みしたが、映画のチームは自分を家族の一員として受け入れてくれた」とマンゴールド監督。フォードは「スティーブンの穴を埋める以上の仕事をしてくれた」と請け合っていた。
 
マッツ・ミケルセンは元ナチスの科学者。シリーズに悪役は不可欠で、しかも徹底した憎まれ役。「インディ・ジョーンズを見て、役者になりたいと思うより、インディになりたいと思ったものだ。そこに出られるなんて夢のよう。たとえ観客の全員から嫌われる役でもね」

記者会見するマッツ・ミケルセン
 

年を取っても幸せ

インディを冒険に引きずり込む相手役は、英国の女優、脚本家のフィービー・ウォーラーブリッジが抜てきされた。屈強な敵を向こうに回し、時にインディもしのぐ大立ち回り。ウォーラーブリッッジは「戦う場面は本当に楽しかった。吹っ飛ばされたり跳ね回ったりがこんな気分だったなんて」と楽しそう。
 
「年を取ることに満足している。もう死んだっておかしくない年なのに、仕事もしているしね」というフォードに、記者の一人が「あなたは今も魅力的。シャツを脱ぐシーンが良かった」と語りかけると「この体のおかげで得をしてきたんだ。指摘してくれてありがとう」と笑わせた。おおらかな人柄がにじむ受け答えに、会見場は拍手でインディへの感謝を表したのだった。
 
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」は6月30日に全国公開される。


ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。