「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」より。  TM & © 2008,2023 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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2023.6.06

ハリソン・フォード 19年ぶりの帰還 衰えぬ人気「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」 

インディ・ジョーンズが帰ってくる! 15年ぶりの新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が6月30日に公開される。ハリソン・フォードも健在で、これが〝最後の〟大冒険。第1作「レイダース 失われた聖櫃(アーク)」の公開から42年、インディ・ジョーンズの活躍を、ひとシネマがまるっと解説します。

勝田友巳

勝田友巳

1970年代末、パラマウントは計5作の「インディ・ジョーンズ」シリーズを作ると発表していた。しかし「レイダース」から8年で3作が公開された後は構想が続かず、3部作でいったん完結。続編の模索が始まったのは2000年、製作総指揮のジョージ・ルーカス、監督スティーブン・スピルバーグ、主演のハリソン・フォードがイベントに参集したことがきっかけだったという。


脚本に曲折 シャマランの名前も

それから何人もの脚本家と脚本が浮かんでは消えするうち(「シックス・センス」などのM・ナイト・シャマランの名前もあった)に時は過ぎ、一方でインディアナ・ジョーンズ若返り説は「ハリソン・フォード以外に考えられない」と早々に否定される。曲折を経て「ジュラシック・パーク」「宇宙戦争」などでスピルバーグ監督と組んだ脚本家デビッド・コープが登板することになり、07年春にようやく製作が発表された。
 
「最後の聖戦」から19年の時間経過を反映し、時代は1930年代から第二次世界大戦後、東西冷戦の最中だった57年に飛ぶ。敵役がナチス・ドイツからソビエト連邦へと移り変わったのも、米国の敵が代わったから当然の成り行きだろう。ジョーンズも老けたという設定で、劇中で「年を取った」と言わせている。
 

ソ連スパイと秘宝争奪

さて映画はいきなり、ジョーンズの窮地から始まる。砂漠の中にある米軍基地に到着した米軍車両の一団、実はスパルコ大佐(ケイト・ブランシェット)率いるソ連のスパイたちだ。
 
ジョーンズは相棒のジョージと共に押し込められた、車のトランクから登場する。銃を構えたスパルコ一味に囲まれたジョーンズが、いかに脱出するかが序盤の見せ場。フォードは「あの年でアクションは無理では」という心配をよそに、はつらつとした動きで健在ぶりをアピール。映画は一気に走り出す。
 
ジョーンズたちが連れてこられたのは、ネバダ州の米空軍施設エリア51。スパルコはジョーンズに、巨大な倉庫の中から米軍が入手した「強い磁気を帯びた、ミイラの入ったコンテナ」を見つけるよう命じる。隠されていたのは5000年前の古代文明が残したという、水晶の頭蓋骨(ずがいこつ)=クリスタル・スカルで、映画はその争奪戦である。
 

50年代流行のB級SFテイスト

このシリーズ、そもそもの発端はスピルバーグとルーカスが、ハリウッド初期の連続冒険活劇を現代に再現しようと始まった。映画草創期に観客を魅了した娯楽作を強化・大型化した大作を目指したのだ。前3作は、30年代に人気だった「人外魔境に乗り込んだヒーローの手に汗握る大活躍」という展開をなぞっていた。
 
50年代に時を移した「クリスタル・スカルの王国」は、この時代の人気ジャンルだったB級SF映画の味付けだ。米軍が宇宙人をひそかに隠したというロズウェル事件に言及し、古代文明や地球外生命体、UFOまで登場する。
 

CG加わりスケール3倍増

ジョーンズは訪ねてきた青年マット(シャイア・ラブーフ)から、母親が南米で人質になっているから助けてくれと頼まれる。母親はジョーンズの旧友、考古学者オックスリー(ジョン・ハート)と行動を共にしていて、南米ペルーにある古代の黄金都市、アケトーの宮殿に向かったという。ジョーンズとマットがペルーに飛ぶとアケトーを探していたスパルコ一味と遭遇、その後は危機また危機の連続、大活劇である。
 
密林を併走する2台の車の上でのスパルコとマットの剣劇、押し寄せる人食いアリ。ジョーンズたちを乗せた水陸両用車は急流を下り、急落する滝に3回も落ちる。「最後の聖戦」までは特撮も手作り感満載だったが、その後のコンピューターグラフィックス(CG)の発展は目覚ましく、今作のアクションはスケールも倍増、いや3倍増。
 
実績を積み重ねた製作陣が思う存分腕を振るい、スクリーンには高揚感が充満。若いラブーフと老練フォードの掛け合いも上々で(後日作品の出来をめぐる発言で不仲説が浮上したのは、ちょっと興ざめだが)、アトラクションムービーの醍醐味(だいごみ)をたっぷり味わえる。
 
久々の復活とあって、待ち続けたファンへのサービスも盛り込まれている。映画冒頭のエリア51の倉庫は「レイダース」で聖櫃(せいひつ)が収容されたのと同じ場所。聖櫃もチラリと画面に映る。そして「レイダース」でジョーンズの恋人だったマリオン(カレン・アレン)が、マットの母親として再登場する。ということは父親は……?という展開は、いかにもスピルバーグ好みの父子ネタ。

90年代以降アクション大作続々

「クリスタル・スカルの王国」公開に当たっては、「今さら……」という冷めた見方も多かった。というのも90年代以降、ハリウッドはマーケティング重視が急速に進み、CGの進化とあいまって派手なアクション映画が続々と公開されていたのだ。
 
96年に「ミッション・インポッシブル」、01年には「ハリー・ポッター」、「ロード・オブ・ザ・リング」と大型シリーズが始まっている。99年には「インディ・ジョーンズ」と同工異曲の「ハムナプトラ」第1作も封切られた。
 
一方で、鳴り物入りで始まったディズニーの「ナルニア国物語」シリーズは「第1章:ライオンと魔女」(05年)、「第2章:カスピアン王子の角笛」(08年)の2作で撤退(3作目は当時の20世紀フォックスが製作した)。巨費を投じるだけに優勝劣敗もシビアに評価される。
 

ライバルを押しのけ、強さを発揮

またこの間、80年代の人気シリーズも次々と復活した。99年、「スター・ウォーズ」は16年ぶりに新3部作を再開。06年には「ロッキー」の第6作「ロッキー・ザ・ファイナル」が16年ぶりに公開され、リングに復帰した還暦のシルベスター・スタローンに称賛と失笑が相半ばしていた。
 
そんな時勢で公開された「クリスタル・スカルの王国」、米国では熱狂的なファンの歓声の傍ら、「旧態依然」「新味がない」といった辛口評も寄せられた。日本公開にあたってはルーカス、フォードらが来日して大キャンペーンを展開。「ライラの冒険 黄金の羅針盤」「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」と同じジャンルのライバルを押さえ、興収57億円を上げてこの年の洋画トップに立った。
 
それからさらに15年。アクション大作の飽和状態に加え洋画人気は下降気味。80歳ジョーンズの神通力、どこまで通じるか。
 

 


「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」
4K Ultra HD+ブルーレイ:6589円(税込み) 2023年6月7日発売
Blu-ray:2075円(税込み)
DVD:1572円(税込み)
NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2023年4月の情報です。

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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