© 2023 PARAMOUNT PICTURES

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2024.5.13

音楽の力で国境と言語、ジャマイカの内戦を乗り越えたオリジネーター「ボブ・マーリー:ONE LOVE」

音楽映画は魂の音楽祭である。そう定義してどしどし音楽映画取りあげていきます。夏だけでない、年中無休の音楽祭、シネマ・ソニックが始まります。

宮脇祐介

宮脇祐介

国境や言葉の壁は溶けてなくなる

ボブ・マーリーとアントニオ・カルロス・ジョビンがいなければ、世界の音楽は選択肢がとても狭いものになっていたのではないだろうか。今や音楽はスマートフォンから流れてくるサブスクリプションが全盛期となって、国境や言葉の壁は溶けてなくなりつつある。その国にパッケージのディストリビューターがいなくても音楽の聞ける時代。ヘッドホンからは米英だけでなく、韓国、タイ、イタリア、アイスランド、ブラジル、もちろんジャマイカなどなどの多種多様な言語とリズムが流れてくる。そんな音楽多様性のオリジネーターが彼らなのである。

1970年代はレゲエの時代になる

 その片方のボブ・マーリーの話。今よりずっと昔、ワールド・ミュージックという言葉が存在していた頃。ビートルズのジョン・レノンをして「1970年代はレゲエの時代になる」と言わしめたのが彼の存在なのである。のちのパンクロックやヒップホップだけでなく、世界の音楽に大きな影響をもたらした。レベルミュージック、反逆の歌を歌い続けた。
 

そのインパクトが今の時代にも共鳴

そんな彼の人生に迫った映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」が公開される。先行したアメリカでは2週連続ボックスオフィスNo.1になったことが、そのインパクトが今の時代にも共鳴していることを証明している。


2大政党の対立

キングストンに住む黒人は「曲が売れるか、警察に撃たれるか」と言われていた70年代のジャマイカ。2大政党「人民国家党(PNP)」と「ジャマイカ労働党 (JLP)」の対立を音楽の力とラスタファリズムで解決しようとした彼は、銃撃され家族の生命さえも危険にさらされジャマイカを後にする。そして、「寒い国」イギリスを活動の拠点にするのであった。
 

名盤「エクソダス」制作秘話

そんなボブに妻であり、バンドの一員のリタ・マーリーは「あなたのラブソングが好き」と怒りとともにレベルミュージックに全力を傾注する彼に警告ともアドバイスとも言える言葉を投げかける。そこで歌われる「そっと灯りを消して」が入っている名盤「エクソダス」制作秘話はこの映画の見どころ。
 

高貴さが作品を貫いている

そんなリタとの愛憎劇、母と自分を捨てたイギリス人である父への葛藤、メンバーの脱退、スタッフの裏切りなど音楽映画のお決まり事もきちんと用意されているが、ライオンともキャプテンとも言われた彼の高貴さが作品を貫いている。それは、ボブ・マーリーのファミリーがプロデュースをし、キャストの多くはボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのメンバーゆかりの人々が演じているからなのだろうか。
 

ウェイラーズ誕生を描いた生き生きとした鼓動

彼の36年の生涯から紡ぎ出された名曲の数々。音楽の力で国境と言語、ジャマイカの内戦を乗り越えたオリジネーターの姿がまぶしく見える。ぜひとも大きなスクリーンと音質の良い劇場で体感してもらいたい。もちろん、彼の音楽を聴き続けてもう45年以上になる僕にとってもとても満足のいく一本であった。特にウェイラーズ誕生を描いた、その生き生きとした鼓動が心をウキウキさせてくれた。
 

レジェンドもとても身近に感じる

ちなみに、彼が生きていれば79歳。「アイ・ショット・ザ・シェリフ」をカバーしたエリック・クラプトン、日本で言えば吉永小百合やタモリと同じ年生まれなのである。そう考えると、レゲエのレジェンドもとても身近に感じるのではないだろうか。もちろん、ボブ・マーリーやレゲエに興味がなくても、彼を支えたリタとの愛の物語としても秀逸なラブストーリーなのである。

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ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

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