チャートの裏側

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2024.12.20

チャートの裏側:客層の幅広さに驚き

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

これは驚いた。3日間で、興行収入が8億円を超えた。「はたらく細胞」だ。テレビのアニメは見たことがある。人の体内にある細胞が擬人化され、「人間模様」ならぬ「細胞模様」が描かれていた。アニメはともかく、この実写化は無謀にも見えたが、よくぞ成功に導いた。

実写化にあたっては、原作、アニメと違うところがある。アニメは、細胞の擬人化の世界を中心に描く。実写版は、細胞を宿している人間世界も主要な舞台とした。人の症状によって、さまざまな細胞が確執、戦いを続ける。その「模様」と人の現実が交互に組み合わさっている。

実は、ヒットの予感があった。あるシネコンで聞いていた。公開2週間前ごろ、小学生の団体鑑賞の予約が入ってきたという。どうやら、教育の一環らしい。細胞の働きがアニメなどでわかりやすく説明されているので、教育に沿うというのだろう。ヒットの手応えがあった。

阿部サダヲ演じる高校生の父親が、仕事中の車中で便意を催すシーンがある。体内で便意の元が暴れ、制御する側のスイッチも入る。阿部の笑える迫真演技だから、子どもたちの記憶に残りそうな場面だった。教育うんぬんを超えて、体内の自然現象が全く別次元から感じられてくる。客層は幅広い。ここも、ちょっと驚いた点だ。ひょっとして、続編があるかもしれない。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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