映画「君たちはどう生きるか」のポスター画像©︎2023 Studio Ghibli

映画「君たちはどう生きるか」のポスター画像©︎2023 Studio Ghibli

2023.7.21

特選掘り出し!:「君たちはどう生きるか」 オリジナル冒険ファンタジー

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

宮崎駿監督が、引退宣言を撤回して発表した10年ぶりの新作。事前に情報をほとんど出さず、公開後も場面写真など非公開だ。というわけで、ポスター画像を再掲。タイトルの元になった吉野源三郎の著作はチラリと登場するだけ。物語は宮崎監督オリジナルの冒険ファンタジーだ。

空襲で母親を亡くした真人は、疎開先で現れた言葉を話すアオサギと共に、朽ちかけた塔の中から通じる異界を旅することになる。

現実とは別の世界に迷い込んだ主人公が、そこで異形の生き物と出合い、導かれながら奥深く進んでいくという展開は「千と千尋の神隠し」など宮崎アニメに共通のモチーフといえる。次々と場面が変わって思いもよらぬ光景が現れ、包丁を持って迫るインコとか大量に現れる可愛らしい「わらわら」とか、キャラクターも豊かで強烈。手描きで表現された、緻密な動きと美しい絵も芸術品である。宮崎=ジブリの醍醐味(だいごみ)はたっぷり味わえる。

ただ、真人は勇敢で礼儀をわきまえて、これまでのやんちゃな主人公よりだいぶ行儀が良い。冒険は母親への満たされぬ思いに駆り立てられるから、いささか感傷的。真人の背後にある戦争が現実と重なり、カタルシスを期待しすぎると物足りないかも。2時間4分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほかで公開中。(勝)

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