Kilian Riedhof
1971年4月26日 生まれ
映画監督「ぼくは君たちを憎まないことにした」(2022年)監督・脚本「ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女」(2023年)監督・脚本
第二次世界大戦中のドイツでナチに協力し、数百人ものユダヤ人を密告したステラ・ゴルトシュラーク(パウラ・ベーア)。ジャズシンガーを志し、アメリカ行きを夢見ていた若く享楽的なユダヤ人女性は、なぜ同胞を売るようになったのか。その数奇な軌跡を描く実録歴史劇だ。 軍需工場での強制労働、身分証を偽造する青年との潜伏生活、ゲシュタポによる残忍な拷問。キリアン・リートホーフ監督はこれらの悲劇的なエピソードを通して〝被害者〟としてのステラを描く一方、強制収容所行きを逃れるため、次第に積極的な〝加害者〟へと変容していった彼女の罪の重さを映し出す。時系列に沿って戦後の裁判まで映像化したストーリー展開は、いささか断...
2025.2.07
パリで起きた同時多発テロで最愛の妻を失ったジャーナリスト、アントワーヌ・レリスが事件発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラー「ぼくは君たちを憎まないことにした」の映画化である。妻の命を奪ったテロリストへ向けて「憎しみを贈らない」とした宣言はまだ記憶に新しく、世界中に大きく響き渡った。脚本も手がけたキリアン・リートホーフ監督に、映画化の意図やテロにどう立ち向かうかなどオンラインで聞いた。 妻を亡くした男の決意 2015年11月13日夜、パリで多数の犠牲者を出すテロ事件が発生し、アントワーヌの妻エレーヌも命を落としてしまう。幼い息子とともに残されたアントワーヌは、突然の悲...
鈴木隆
2023.11.16
最初に一つ、ご質問。武装テロによってあなたの妻、夫、あるいは子どもや親が殺されてしまったら、あなたはどうしますか。 大切な人が命を奪われたら…… むごい質問ですね。自分にとって大切な人が命を失うという状況を目に浮かべるだけでショックを受ける人もいるでしょう。なぜ死んでしまったのか、どうして自分ではなく、大切な人のほうが死んでしまったのか。その人の声や姿がフラッシュバックのように襲いかかり、悲嘆に暮れる。どうしますかなどと問われても、どうしようもない。その人の命は戻ってこないからです。 怒りと憎しみも湧き起こるでしょう。理由もなく人を殺すなんて、同じ人間のすることではない...
藤原帰一
2023.11.10
5年で日本を3000キロ縦断 東北の震災で家族を失ったジャーマンシェパード犬の多聞(たもん)は、離れ離れになった大切な人に会うため5年の歳月をかけて日本を3000キロ縦断する。その途中で出会った人々は多聞と過ごす時間のなかで心が癒やされ人生に希望を見いだしていく。人と人とをつなげながら旅する多聞はどこへ向かっているのか――。 「ラーゲリより愛を込めて」にもクロという犬が 瀬々敬久監督、林民夫脚本と言えば「ラーゲリより愛を込めて」が記憶に新しい。戦後10年、ラーゲリ(収容所)で強制的に働かされた日本人たち。この生活はいつまで続くのか、果たして祖国に帰れる日は来るのか……と希望を見い...
PR東宝
2025.3.10
ジャーナリストのアントワーヌ(ピエール・ドゥラドンシャン)は妻のエレーヌ(カメリア・ジョルダナ)と幼い息子とともに、せわしないながらも幸せな毎日を過ごしていた。しかし、エレーヌがテロの犠牲となって、命を落としてしまう。アントワーヌはあふれ出てくる自分の気持ちをSNSにアップする。そこには息子とこれからいつも通りの暮らしを送ること、息子もまた「君たちを憎まない」とつづられていた。 テロ発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラーを映画化。悲しみの渦中にいても小さな息子はぐずり、アントワーヌはいら立って声を荒らげる自分に嫌気が差す。自分が書いた前向きなメッセージに、自分自身が苦しめられるこ...
ジャズシンガーとしてのキャリアを夢見ていた1人のユダヤ人女性が、ナチスドイツの支配下でゲシュタポの協力者となって、ユダヤ人同胞を密告して生き伸びたという衝撃の実話を映画化。監督は、「ぼくは君たちを憎まないことにした」(2022年)で、ドイツ映画賞脚本賞を受賞したキリアン・リートホーフ。戦争の時代の犠牲者であり、加害者でもある主人公のステラを、「水を抱く女」(20)でベルリン国際映画祭主演女優賞を獲得したパウラ・ベーアが演じている。 1940年8月、戦争の激化とユダヤ人への圧力が高まるなか、ブロードウェイでジャズシンガーとなることを夢見ていた18歳のステラ・ゴルトシュラーク(パウラ・ベーア)だ...
原作は、2015年11月13日に発生したパリ同時多発テロで最愛の妻を亡くしたジャーナリストのアントワーヌ・レリスによる同名のベストセラー小説。アントワーヌは、最愛の人を予想もしないタイミングで失う悲劇に遭いながらも、テロリストに宛てた手紙をフェイスブックに投稿する。それは、憎しみの連鎖に巻き込まれないよう自らを律し、息子との新しい生活を受け入れる決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージだった。その投稿は、20万人以上にシェアされ、「ル・モンド」の一面に掲載される。アントワーヌの〝憎しみを贈らない〟詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。 ...