夜を走る
故大杉漣の最後の主演作「教誨(きょうかい)師」(2018年)の佐向大監督、4年ぶりの新作だ。主人公は郊外の鉄くず工場で働きながら、うだつの上がらない日々を送るアラフォー独身男の秋本(足立智充)。要領のいい妻子持ちの後輩、谷口(玉置玲央)は、なぜかそんな秋本のことを気にかけていた。ある夜、思いがけない出来事が2人の運命を激変させていく。 この世の底辺に生きる男たちの葛藤を描く人間ドラマのように始まる物語は、前半のうちに死体遺棄が絡むクライムスリラーへ転調。その先には、不条理劇のごとくシュールで予測不能の展開が待ち受ける。鉄くず工場の生々しい実景と、響き渡る轟音(ごうおん)の何というすさまじさ。...