第35回東京国際映画祭が始まります。過去2年、コロナ禍での縮小開催でしたが、今年は通常開催に近づきレッドカーペットも復活。日本初上陸の作品を中心とした新作、話題作がてんこ盛り。ひとシネマ取材陣が、見どころとその熱気をお伝えします。
2022.11.01
青木柚「ゆったりした時間の流れと包容力」高知ロケで魅力実感 「はだかのゆめ」Q&A:東京国際映画祭
第35回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門で10月31日、「はだかのゆめ」がワールド・プレミア上映された。上映後のQ&Aには出演した青木柚、唯野未歩子、前野健太、甫木元(ほきもと)空監督が登壇した。母親が余命宣告を受けた甫木元監督の実体験を元に、高知県でロケ撮影した。
(C)2022TIFF
甫木元監督「青山作品と上映、夢だったが」
甫木元監督は、3月に急逝した青山真治監督から、大学時代に映画を教わったという。青山監督から「忘れられた日本人」(宮本常一著)を勧められて読んだことをきっかけに小説を書き、後に本作の脚本へと発展した。「映画祭で(青山監督の作品と)一緒に上映するのは、夢だった」と語り、深い思いをにじませた。
Q&Aでは「映画の中で、生と死の曖昧さを感じたが、意図はあったのか」という質問がキャストと監督に向けられた。
甫木元監督は、四万十川に沈下する前提の橋が架けられたり、お遍路があったりすることから、高知県に「あの世とこの世の境界線が曖昧な印象を受けた」という。母親との関係を脚本に反映させ「母親が死んで自分が生きているのではなく、母親が生きているのを見たい」との思いを込めた。
(C)2022TIFF
青木「0か100じゃない揺らぎを大事にしたい」
青木は脚本を初めて読んだ時、「だれが生きていて、だれが死んでいるのか分からなかった」と明かす。ほとんどセリフがない役柄だったが「言葉にできないものがこの映画では大事だ」と感じたという。「0か100じゃない揺らぎを大事にしたいと考えていた」と振り返った。唯野も、脚本を読んで「生きてる人が生きてないようで、死んでる人が死んでないみたいだと思った」。
一同は撮影を通して、高知県の魅力を大いに感じたと口をそろえる。青木は初めての高知で「『いてもいいよ』と言ってもらえているような感覚と、ゆったりした時間の流れがあり、土地の包容力を感じた」。
前野は「森がざわっとして、顔に見えた」と、神秘的な経験と共に自然に圧倒されたことを明かす。四万十川の様子が映し出されるテレビ番組をずっと見ていたり、飲み屋の優しい大将と仲良くなって一緒に飲みに行ったりと「とても良い時間を過ごした」。前野の思い出話に、登壇者に和やかな笑いが起こった。
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