「月の満ち欠け」Q&Aに登壇した廣木隆一監督=鈴木隆撮影

「月の満ち欠け」Q&Aに登壇した廣木隆一監督=鈴木隆撮影

2022.10.30

廣木隆一監督 「目黒蓮は役に没頭、そのたたずまいがいい」と絶賛 「月の満ち欠け」Q&A 東京国際映画祭

第35回東京国際映画祭が始まります。過去2年、コロナ禍での縮小開催でしたが、今年は通常開催に近づきレッドカーペットも復活。日本初上陸の作品を中心とした新作、話題作がてんこ盛り。ひとシネマ取材陣が、見どころとその熱気をお伝えします。

鈴木隆

鈴木隆

第35回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門に出品された「月の満ち欠け」のQ&Aが29日行われ、上映後に登壇した廣木隆一監督が大泉洋、目黒蓮ら俳優陣の演技を称賛した。愛する妻梢(柴咲コウ)や娘瑠璃(菊池日菜子)を亡くした小山内堅(大泉洋)と、27年前にある女性、正木“瑠璃”(有村架純)と許されざる恋をした大学生、三角哲彦(目黒蓮)。無関係だった彼らの人生が“瑠璃”という女性の存在で交錯するラブストーリーだ。
 

生まれ変わりを信じる

佐藤正午の直木賞受賞作でベストセラーとなった小説の映画化。廣木監督は「話や人が入り組んでいて映画にするのは大変だと思ったが、僕はわりと挑戦者。人間関係をすっきりさせてファンタジーとして成立すればいい」と製作に取り組んだ。「生まれ変わりとか、どこかで信用している部分もあって、親戚に子どもができるとどこかのおばあちゃんやおじいちゃん?という見方もあって、リアルに考えて作った」
 
司会から、豪華なキャスティングについて聞かれ「大泉さんが最初に決まった。大泉さんは唯一、観客と同じように生まれ変わりを信じているわけではない普通のお父さん。皆さんの目線で演じてくれてそれが映画のベースになっている。それが最後には、生まれ変わりを信じてみようかという気持ちを表現してくれた」と感謝の言葉を述べた。
 

役に溶け込む 目黒蓮

続いて、観客との質疑応答が始まった。Snow Manの目黒蓮への質問には「蓮君は、現場で自分のキャラクターを守るように、他の人と口を利かずにすごく役に没頭していた。そのたたずまいがいい役者。大泉さんの家を訪ねるシーンでも、自分の中では緊張感もあって彼のいいところが出ていたし、いい経験になったと思う。シーンの雰囲気が出ていて大泉さんもやりやすかったのではないか」と高く評価した。
 
有村との恋愛模様や感情移入についての問いでは「蓮君と有村さんのシーンは、2人の関係が近くなっていくのがごく自然に分かるような芝居をしていた。有村さんが亡くなった後に一人で涙を見せるシーンも素直に役に溶け込んでいて、印象的なカットになった」と続けた。
 

高田馬場駅前 CGで再現

次に、子役の演出を聞かれ、3人ともオーディションで選んだとした上で「台本を読ませず、現場でその場で覚えて言ってもらった。台本を渡してしまうと、お母さんやお父さんと練習してきてしまう。みんな天才だった」。大泉さんに抱きついて泣くシーンでも「ここは泣いた方がいいですか」と僕の所に来て聞くので、「いいよ、泣いて」と話したら、見事に泣く演技をしてくれた。「それにつられて大泉さんも泣くいいシーンになった」と感心することしきりだった。
 
さらに、再三登場する1980年代の高田馬場駅前の風景と世界観を尋ねる質問には「歩いてる人と車以外は全てCG(コンピューターグラフィシクス)。雨のシーンとかセットでないと撮れない。茨城県筑西市のスポーツ施設の駐車場にグリーンバックを張り、忠実に再現された街並み、80年代ファッションのエキストラ、お店の看板もCGで作った」とスタッフの作品への思いとこだわりを披露した。「今行っても見られません。この映画でしか見られません」と会場の笑いも誘った。
 
【関連記事】
・永野芽郁 「スイッチが入った戸田さん、怪物みたいだった」 「母性」舞台あいさつ 東京国際映画祭
・井上真央「難しかったシーンは全部って言いたい」 「わたしのお母さん」舞台あいさつ 東京国際映画祭
・河合優実主演作「少女は卒業しない」初披露に「映画が放たれた」 東京国際映画祭
・稲垣吾郎「僕にあてて脚本を書いてくれたことがわかり、撮影が楽しみだった」「窓辺にて」ワールド・プレミア
・総力特集!東京国際映画祭2022

ライター
鈴木隆

鈴木隆

すずき・たかし 元毎日新聞記者。1957年神奈川県生まれ。書店勤務、雑誌記者、経済紙記者を経て毎日新聞入社。千葉支局、中部本社経済部などの後、学芸部で映画を担当。著書に俳優、原田美枝子さんの聞き書き「俳優 原田美枝子ー映画に生きて生かされて」。