「ジャンゴ 繫がれざる者」より © 2012 Visiona Romantica, Inc. All Rights Reserved.

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2023.10.24

演技を追求、レオナルド・ディカプリオの役作りと作品ファーストが光る映画たち

1990年代前半にブレークしてから約30年。類いまれな演技力でファンを魅了し続け、常にハリウッドの第一線を走るレオナルド・ディカプリオのキャリアと魅力をさまざまな角度から検証します。

村山章

村山章

1990年代のディカプリオは、天性の演技力を兼ね備えたハリウッド一の美少年だった。映画デビューを飾ったB級ホラー「クリッター3」(91年)の子役時代を引き合いに出されると本人も嫌がるだろうが、93年にはナイーブな魅力が炸裂(さくれつ)した「ボーイズ・ライフ」でロバート・デ・ニーロと初共演を果たし、「ギルバート・グレイプ」ではジョニー・デップふんする主人公の知的障害を持つ弟役に起用され、あまりにも真に迫ったなりきり演技で世間の度肝を抜いた。

しかも「ギルバート・グレイプ」の熱演で19歳にしてアカデミー助演男優賞にノミネート。「若き天才あらわる!」のセンセーションは、世界中で女性ファンを急増させた「ロミオ+ジュリエット」(96年)と、当時の映画史上の興行記録を塗り替えた「タイタニック」(97年)によって頂点を迎えることになる。

ディカプリオのみごとさは、「タイタニック」の未曽有の成功にあぐらをかくことなく、ブームの追い風によって得た業界での地位を利用して、より演じがいのある役や作品を求め続けたことだろう。
 
成功作も失敗例もあるにせよ、出演作を厳選して絞り込み、バズ・ラーマン、ジェームズ・キャメロン、ウディ・アレン、ダニー・ボイル、マーティン・スコセッシ、スティーブン・スピルバーグ、リドリー・スコット、クリストファー・ノーラン、クリント・イーストウッド、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと超一流の監督と組みまくった。

特にスコセッシとのコンビ作は最新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」で6本目。巨匠スコセッシにディカプリオを紹介したのはロバート・デ・ニーロだったそうで、スコセッシは監督として、ハリウッドスターでいることよりも演技者としての成長を望むディカプリオを後押しすることになる。


「ブラッド・ダイヤモンド」より ©2007 Warner Bros.Entertainment Inc. All rights reserved.

スターらしさと役作りが共存「ブラッド・ダイヤモンド」、イメージを覆した「ジャンゴ 繫がれざる者」

2006年の「ブラッド・ダイヤモンド」は、まだ映画スターらしさを残しながらもディカプリオ渾身(こんしん)の役作りが堪能できる。ディカプリオが演じたのはアフリカ南部のローデシア(現ジンバブエ)出身の元傭兵(ようへい)で、紛争ダイヤモンドのブローカー。
 
アフリカの内戦に乗じてもうけようとする商売人ながら、ある親子を助けるために自らの命を投げ出そうとする役どころで、元傭兵らしく身体を鍛えあげ、劇中では役の出自に合わせてアフリカなまりの英語で通し、確かな説得力でシリアスなドラマとハードなアクションの両面を背負ってみせた。

クエンティン・タランティーノ監督と初めて組んだ「ジャンゴ 繫がれざる者」(12年)の怪演も語り草だ。ディカプリオが演じたのは主人公ではなく、黒人奴隷を蔑む人種差別主義者の農場主。
 
口を開けば差別発言が飛び出すキャラクターを演じるのはかなりの苦痛を伴ったというが、タランティーノの狙い通り、それまでのイメージを覆すサイテーのろくでなしを大熱演。ディナーのシーンでは本番中にガラスで手を切ってしまったが、流血したまま演技を続け、そのままの姿が本編にも採用されている。

アカデミー主演男優賞を受賞した「レヴェナント 蘇えりし者」(15年)では、極寒の大自然での長期ロケに挑戦。3分間に及ぶ野生の熊との強烈な格闘シーン(熊は当然ながらCG)や、終始傷だらけで旅を続ける主人公の姿から「最も過酷な撮影だった」と語るディカプリオの言葉にも納得しかない。
 
ディカプリオのテンションも相当だったようで、バイソンの肝臓を生食するシーンではスタッフから渡されたフェイクの肝臓の出来ばえに納得がいかず、その場で本物のバイソンの肝臓にかぶりつくことに決めたという。


「ドント・ルック・アップ」より NIKO TAVERNISE/NETFLIX © 2021

一般人の悲哀を演じた「ドント・ルック・アップ」。新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」で更なる新境地に

振り切ったキャラはやり尽くしたのか、21年のブラックコメディー「ドント・ルック・アップ」では、これまでとは打って変わった小市民を好演。巨大彗星(すいせい)が地球に接近していることを突き止める大学教授なのだが、日和見な政府に取り込まれて情報操作に利用され、ケイト・ブランシェットふんするテレビキャスターから誘惑されて浮気に走り、なけなしの善良さを発揮して世間に警告を発するも、結局は大局を動かすことはできずに地球滅亡の運命を受け入れる。まさにどこにでもいそうな一般人の悲哀とおかしみを絶妙に体現していた。

そして「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」では、ポスターに写ったりりしい顔つきとは正反対の、ディカプリオ史上最も「ヘタレ」な演技で驚かせてくれる。かつては世界中の女性の熱狂を一身に浴び、演技者としてハリウッドの頂点に上り詰め、その先にあったのは、人間の弱さを赤裸々にこれでもかとさらけ出す新境地。果たして次なる地平ではどんな景色を見せてくれるのか、怖いものなしの天才俳優のさらなる未来に期待せずにはいられない。
 
<画像使用作品一覧>


「ジャンゴ 繫がれざる者」
ブルーレイ&DVDセット(2枚組み、通常版):5217円(税込み)
発売・販売元:㈱ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2023年10月現在の情報です。
 

「ブラッド・ダイヤモンド」
ブルーレイ:2619円(税込み)/ DVD:1572円(税込み)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2023年10月現在の情報です。
 

「ドント・ルック・アップ」
Netflixで配信中

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ライター
村山章

村山章

むらやま・あきら 1971年生まれ。映像編集を経てフリーライターとなり、雑誌、WEB、新聞等で映画関連の記事を寄稿。近年はラジオやテレビの出演、海外のインディペンデント映画の配給業務など多岐にわたって活動中。

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