第35回東京国際映画祭が始まります。過去2年、コロナ禍での縮小開催でしたが、今年は通常開催に近づきレッドカーペットも復活。日本初上陸の作品を中心とした新作、話題作がてんこ盛り。ひとシネマ取材陣が、見どころとその熱気をお伝えします。
2022.11.01
川村元気×石川慶「海外で勝負するには〝複眼〟で企画の検討を」 日本映画の可能性語る:東京国際映画祭
第35回東京国際映画祭のスペシャルトークセッション「『ある男』×『百花』日本映画、その海外での可能性」が30日、開催された。
ベネチア国際映画祭に出品された「ある男」の石川慶監督と、サンセバスチャン国際映画祭に出品された「百花」の川村元気監督が登壇。日本映画の現状や、海外に通用する映画作りについて、気鋭の監督2人が語り合った。
(C)2022TIFF
石川慶「5年前と比べ知名度を実感」
冒頭で、2人はそれぞれの作品での海外の反応について振り返った。石川監督は、自身が監督した作品「愚行録」(2017年)でベネチア国際映画祭に参加した時と比較して、知名度が上がったと実感したという。妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝といったキャスト陣の人気を肌で感じたためだ。これは、アジア映画に対する認知度が全体的に上がっている結果だと話す。
サンセバスチャン国際映画祭に、監督として初参戦した川村監督は、現地での最初の反応は「塩対応」だったという。だが公式上映後には評価が高まり、現地の映画プログラマーの態度も優しくなった。結果的に、川村監督は日本人としては初めて最優秀監督賞を受賞する。
(C)2022TIFF
川村元気「海外でも共感してもらえるテーマ設定が大切」
川村監督は、日本の作品を海外で受け入れてもらうために一番大事なのは「企画」だと強調。認知症を発症した母と子の関係を描いた「百花」は、実際に認知症を患った川村監督の祖母を描いている。
「認知症」という、日本だけでなく海外でも共通するテーマを扱ったことで、外国人からも共感され、高い評価を得た。「今この時代、何が、どうマッチするか。時間をかけて企画を考えることが重要です」
ポーランドで映画を学び、ポーランド人と一緒に映画を製作した石川監督は、同国での日本映画の位置付けは「メジャーではなく、〝ゲテモノ〟だった」と話す。「英語に訳して面白い作品でないとダメだ」と痛感した経験から、海外のマーケットを知り「海外の視点」を持つことの大切さを主張した。
国際映画祭はゆるい連帯の場
「初めから海外に向けた作品を作ろうとすると、しょうゆかバターかわからない味になってしまいます」という川村監督も、「百花」の脚本ができた際、フランスの映画会社ワイルドバンチに意見をもらうなど、積極的に海外の視点を取り入れてきた。「(「百花」の脚本は)ワイルドバンチから面白いと言ってもらえたので、言語の壁を越えられると感じました」
石川監督と川村監督は、映画を作る際は独り善がりにならず、〝複眼〟で作品を見つめることが重要だと口をそろえた。
〝複眼〟とは、自分の作品に対してハッキリと意見を言う存在で、プロデューサーや監督助手のように自分のチームのメンバーでもいいし、チームとは関係ない映画人でもいい。「複眼を持つことは、作品の多様化につながります」と川村監督。石川監督は「我々は、コミュニティーの垣根を越えて、もっとゆるく連帯していいと思います。映画祭はそのためにあると思う」と、国際映画祭の在り方についても提案した。
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