映画でも配信でも、魅力的な作品を次々と送り出す韓国。これから公開、あるいは配信中の映画、シリーズの見どころ、注目の俳優を紹介。強力作品を生み出す製作現場の裏話も、現地からお伝えします。熱心なファンはもちろん、これから見るという方に、ひとシネマが最新情報をお届けします。
2023.7.02
保守的な国民にどう響くのか 「エゴイスト」松永大司ティーチイン プチョン国際ファンタスティック映画祭
1日、韓国・プチョン市役所内のシティーホールメインシアターにて松永大司監督「エゴイスト」が上映され、ティーチインが行われた。
高山真の自伝的小説を映画化。鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子という好感度の高いキャスティングとゲイ、パーソナルトレーナーとその母への愛を描いたことで日本でも話題になった。3月、香港で行われた第16回アジア・フィルム・アワードでは宮沢が助演男優賞を受賞。今月、韓国でも上映される。観客は若い女性が多く、上映後のティーチインでは積極的に質問をする姿が印象的だった。
まず、司会者からの質問を受けた松永監督は「原作はモノローグが多く、それをどう映像化していくかが脚本の作業だった。それを撮影現場で変更していく。4分の1は原作にも脚本にもないシーンを撮った。脚本家は出来上がった映画を見てびっくりしたのではないか」とユーモアを交えて答えた。
撮影手法とキャスティングを聞かれると「クローズアップを多く使った。撮り方を主観的にしてもらい、出演者を身近に感じてもらいたかった。キャスティングはプロデューサーと鈴木、宮沢の2人でどうかと話した時、カッコ良すぎるのではないかと思った。鈴木とは監督になる前からの付き合いで、彼の持っている柔らかな部分を出したかった」と説明した。
© 2023 高山真・小学館「エゴイスト」製作委員会
続いて会場からの質問に移った。音が印象的だったとの問いに、「音で映っていない世界を作ることを意識していた。自動販売機で水を買うシーンも(主人公の表情を映ため)音だけで描いた」。
保守派の人が意見してきたらどうするとの質問に「まず反対した人が何を言うかを聞く。初めから一方的に自分の意見を言うことはない」と答えた後、「韓国の人は難しいことを聞く」と苦笑いをした。
他にも多くの質問に答えた松永監督は最後に「この映画を多くの人が見てくれると良い。そして、映画を楽しむだけではなく、結果多くの人が生きやすい世の中になってもらうために、見た人がいろいろな意見を発信してほしい」としめくくった。ティーチイン終了後も多くのファンのサインに応えていた。