「映画の朝ごはん」ⓒ ジャンゴフィルム. All Rights Reserved.

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2023.11.08

映画村のソウルフード、ポパイのおにぎりがドキュメンタリー映画に「映画の朝ごはん」

3度の飯より映画が好きという人も、飯がうまければさらに映画が好きになる。 撮影現場、スクリーンの中、映画館のコンフェクショナリーなどなど、映画と食のベストマリッジを追求したコラムです。

宮脇祐介

宮脇祐介

このドキュメンタリー映画「映画の朝ごはん」は、早朝発のロケバスに積んである朝食のポパイのおにぎりと、映画における制作部という、末はプロデューサー(続けていればだが)、現場では大いなる雑用係のもっとも主役を張りづらい組み合わせの物語である。
 
おにぎり2個と唐揚げやゆで卵などおかず6種類のうちの一つを選択。そんなシンプルなポパイのおにぎりを大のベテランが子供のように笑顔で語り出す。沖田修一、黒沢清、瀬々敬久、山下敦弘の監督陣、内藤剛志の俳優やスタッフたち。以前取材した東京都稲城市の天地の恵みおにぎり弥平四郎の小椋英沖さんが「おにぎりは人を笑顔にする」と言ったことを思い出させる。

 
そのおにぎり作りはポパイの年季の入った工場で深夜0時から始まり、飯炊き、唐揚げ、ゆで卵などの調理、おにぎり作り、梱包(こんぽう)、配達とそれぞれのプロフェッショナルが腕を振るう。その寸分の狂いもない動きが木型の手作りで、お好みの具のオーダーメードを実現している。なんと具の種類は現在31種類!

 
片や制作部の主役は新人の竹山俊太朗。脚本家を目指すが現場の雑用に振り回される毎日。そんな竹山を毒舌ながらも孫を見るような目で見守る大ベテラン守田健二。そろそろ現場から身を引くことも考え出した壮年の男。

 
竹山は沖田修一監督の現場に入りたいと熱望して制作部に入ったが、遅くまで雑務に追われる。好きな映画のDVDに囲まれた部屋と現場の往復である。その部屋に大事な制作費を忘れて多目玉を食らうことも。そんなのでは自分オリジナルの脚本も書けないよなあ。若いって言うのはホント忙しいものである。
 
ところでこの映画は日活の社員対象試写会で拝見したのだが、そこにはポパイのおにぎりと唐揚げが用意してあったのだ! しかも、映画を見ながら実食してくださいという趣旨で! 
 
なんの変哲もないという使い古された形容詞がよく似合う見た目と味。なんだか僕には故郷福岡の名物、元祖長浜家(屋)のラーメンを思い出させた。うまい、まずいではない、そこで育って食べたソウルフードというのがピッタリの一品。映画村のソウルフードがポパイのおにぎりなのだとむさぼりながら実感した。そして、映画が終わると明日もがんばろう! と前向きになった自分がいた。
 
もしあなたが仕事に疲れて元気が出ないなあと思っていたら、きっとこの映画のおにぎりと自分とよく似た制作・竹山があなたを元気にしてくれるはず。そんな等身大の作品なのである。
 
10日シネスイッチ銀座、キネカ大森にて公開。
 

☑人気ロケ飯

ポパイのおにぎり
おにぎり作りは午前0時から始まる。炊きたてのご飯は年季の入った木枠で型をととのえ、伝票に従って31種類の具を入れ握る。2個で一つの容器にさらに6種類のおかずのうち一つを伝票に従って入れていく。熱々の鍋から取り出したウーロン茶缶とともに配達される。2パック、3パックと食べるつわものもいるという。

撮影:宮脇祐介

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ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

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