映画でも配信でも、魅力的な作品を次々と送り出す韓国。これから公開、あるいは配信中の映画、シリーズの見どころ、注目の俳優を紹介。強力作品を生み出す製作現場の裏話も、現地からお伝えします。熱心なファンはもちろん、これから見るという方に、ひとシネマが最新情報をお届けします。
2023.7.04
日韓映画それぞれの事情を映画人が語る プチョン国際ファンタスティック映画祭:フォーラムルポ③
6月30日韓国・プチョン市高麗ホテルで行われた「メード・イン・アジア・フォーラム・セッション1 韓日映画フォーラム『パンデミック』時代の映画産業 問題と解決方法」。日本側のTBSテレビ映画事業部・辻本珠子さん、映画監督・深田晃司さん、韓国側の韓国脚本家協会会長のキム・ビョンインさんがそれぞれ発表した。最後に映画プロデューサーのチョ・ナギョンさんの司会で5人の日韓の映画プロデューサーが登壇してそれぞれの立場でパンデミックの状況とこれからを語った。
まず、韓国映画製作家協会会長・イ・ウンさんは「フランスの国立映画映像センター(CSC)の存在を知って涙が出るくらい感動した。それを見習って韓国映画振興委員会(KOFIC)を作る過程で韓国映画興行界は急激に市場の寡占化が進んでいって、映画は消費されるコンテンツなのか、文化なのかとの葛藤がある。そして、パンデミックと配信の波でさらに混沌(こんとん)としている」と戸惑いを見せた。
日本から参加した映画製作・配給会社スモモ代表・李鳳宇さんは、「深田晃司さんは映画監督を超え日本映画、ミニシアターを支えた。この映画祭を通じて日韓の新しい連携の場になれば良い」と語った。
東映映画企画部プロデューサー・橋本恵一さんは「国際映画祭に来ると多様性に気づく。実写映画が外国で稼げる力をつけることが、この先10年を見すえた課題。『スラムダンク』、『ワンピース』やホラー映画など自社の映画同様実写映画を世界にと改めて思った。また、今年から始まった日本映画制作適正化機構の実証実験対象映画をプロデュースした。予算が上がった半面、スケジュールに余裕があってアクシデントも吸収できた」と経験を語った。
「犯罪都市」など大ヒット映画のプロデューサーを務めるチャン・ウォンソクさんは「パンデミックは大きな危機で韓国映画の弱点があらわになった。どんなことも最善ではなく、改善していくことが大切。韓日の映画人が集まり打開をしていこう」とエールを送った。
東宝映画企画部プロデューサー・臼井真之介さんは「自分の人生にとっても一番の刺激的な一日。キム・ビョンインさんの『基本に戻れ』という話は感銘を受けた。最近国内の興行含めて印象的であった映画で『ラーゲリより愛を込めて』『RRR』『BLUE GIANT』がそれに当たると思う。映画作りの基本、良い企画は良いストーリーから。そして劇場で見るべき映画を作ること。それが国境も人種も超えるのではないか」と感想を述べた。
また、全員の発言の後、日本の話題では深田監督らが提案している「日本版CNC」や日本映画制作適正化機構、製作委員会方式の限界などの話題が上がった。
一方、韓国の話題ではKOFICの財源を映画の劇場収入だけでなく、フランスのように配信やテレビ放映までに広げて求めるべきだとの話が中心だった。
最後に司会のチョさんが「今日をきっかけに、より活発な日韓両国やアジアの映画界の交流でパンデミックを克服していく」ことを誓ってこのフォーラムを閉会した。