2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。
2023.12.27
「対話」がもたらすつながりと気づき 山田あゆみ
ゆく年編
「イニシェリン島の精霊」
「コンパートメントNo.6」
「対峙」
「聖地には蜘蛛が巣を張る」
「aftersun/アフターサン」
「大いなる自由」
「ウーマン・トーキング 私たちの選択」
「青いカフタンの仕立て屋」
「君は行く先を知らない」
「PERFECT DAYS」
内面に目を向けるきっかけに
2023年公開の映画の中で「対話」がテーマのひとつになっている作品が印象深い。
「対峙」は、高校銃乱射事件でともに息子を失った加害者と被害者の両親が話し合う。「ウーマン・トーキング 私たちの選択」は、ある村でレイプされた女性たちが、村を去るか、加害者たちを許すか、闘うか議論する。「コンパートメントNo.6」は、偶然寝台列車の同室に乗りあわせた男女が、同じ時間をすごすことで心の距離を縮めていく。
どの作品も、対話から他者への理解や許しが生まれる。そして、自分自身の内面に目を向け、気づきを得られる。新型コロナウイルス大流行のさなか、人との接触が禁じられ、孤独を思い知ったからこそ、対話の大切さ、豊かさに改めて気づかされた。2024年も、映画による人と人の対話やつながりが、たくさんの喜びや気づきをもたらす1年になることを願う。
くる年編
「僕らの世界が交わるまで」 1月19日公開
「異人たち」 4月19日公開
「悪は存在しない」 4月26日公開
山田太一の小説を米で再映画化
アンドリュー・スコット、ポール・メスカルの共演で、山田太一著「異人たちとの夏」を映画化した「異人たち」が一押しだ。死んだはずの両親との再会から巻き起こるドラマが、はかなくもあたたかな余韻を残す作品だ。ジェシー・アイゼンバーグの初監督作品「僕らの世界が交わるまで」は素朴だが胸を打つ一作。濱口竜介監督による新作「悪は存在しない」も見逃せない。
【ひとシネマ的 ゆく年くる年 総まくり2023年】
人生の苦難、心の闇……〝痛み〟引きずった作品たち SYO
面白い作品を満喫 悔いなき1年 高橋佑弥
日本映画に感じた「物作り」の力 洪相鉉
やっと戻った日常 心の琴線に触れた10本 後藤恵子
印象残った 今日的なテーマの良作 井上知大
良作ぞろいの欧州アートハウス系 高橋諭治
アニメ映画に泣いて笑って きどみ