この1本:「福田村事件」 狂気への過程、丹念に
関東大震災直後の1923年9月6日、千葉県福田村で、香川県から来た被差別部落出身の行商人15人のうち9人が、朝鮮人だと誤解され自警団ら村民に惨殺された。タブーとされていた史実を発掘したノンフィクションが出版されたのが2013年、本作は「A」などのドキュメンタリーで知られる森達也監督が、事件を劇映画として再現した。歴史の闇に埋もれた惨劇に名前と顔を取り戻し、当事者の目から語り直す力作だ。 新助(永山瑛太)が率いる薬の行商団15人が、香川県を出発する。一方、日本統治下の朝鮮で教師をしていた智一(井浦新)は、妻の静子(田中麗奈)と帰国し、故郷・福田村で農業を営み始める。シベリアで夫が戦死した咲江(...