「せかいのおきく」
江戸末期、矢亮(池松壮亮)と中次(寛一郎)は江戸で便所の汲(く)み取りをし、肥料として農家に売る下肥買いで生計を立てている。武家育ちのおきく(黒木華)は父源兵衛(佐藤浩市)と長屋で暮らし、子供に読み書きを教えている。ある日、侍に斬りつけられたおきくは父と自分の声を失ってしまう。 モノクロ映像とはいえ糞尿(ふんにょう)が何度も登場するが、物語はいたって心地よく誠意と情感にあふれている。目線が一貫して低いのも好ましい。さげすまれがちな仕事の2人の会話がコミカルで、時に世の中の本質をつく。長屋の会話も含め庶民のエネルギー、生きる力が画面から湧き上がる。おきくと中次が、互いの思いを伝えあうシーンがす...