「悪は存在しない」©2023NEOPA Fictive

「悪は存在しない」©2023NEOPA Fictive

2024.7.04

今を捉える視点に魅了 鈴木隆

2024年も半分が過ぎ、映画館で配信で、たくさんの作品が公開されています。1年の折り返し点でちょっと立ち止まって、今年の秀作、話題作をおさらいしてみませんか。ひとシネマ執筆陣が、上半期の作品からお勧めの5本を選びました。

鈴木隆

鈴木隆

「悪は存在しない」
「人間の境界」
「ゴースト・トロピック」
「パスト ライブス/再会」
「燈火(ネオン)は消えず」

破天荒なパワーを楽しみたい

上半期に気に入った作品を並べてみたら、優に20本を超えた。邦画も洋画も時々の時代や場所、人を映す作品ばかり。目の前や周囲で起きていることも、遠い地での出来事でも、今を的確にとらえる視点に魅了された。使い古された「社会派」という範疇(はんちゅう)など大きく超え、ジャンルなど問わない。

もう一つ気にかけたいのは、学生の頃にわけも分からずひたすら見ていた「この映画って何?」「理解できない」といったたぐいの作品。映画は何でもあり。観客の好みより作り手の意志や思いが先に立つ作品の、パワーを楽しみたい。ウェルメードな映画も結構だが、やたらに目につき食傷気味。不穏だろうが観客を困惑させようがおかまいなし、セオリーなど知らぬ存ぜぬで価値観や常識を覆し、余白だらけの映画を大歓迎。アート系とは限らない。昨今、希少だからこそ余計にひいき目に見てしまう。

さて下半期。そんな映画との出会いに期待している。公開に先んじて、「お母さんが一緒」「ナミビアの砂漠」「ラストマイル」など、作り手の思い、受け取りました。 

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ライター
鈴木隆

鈴木隆

すずき・たかし 元毎日新聞記者。1957年神奈川県生まれ。書店勤務、雑誌記者、経済紙記者を経て毎日新聞入社。千葉支局、中部本社経済部などの後、学芸部で映画を担当。著書に俳優、原田美枝子さんの聞き書き「俳優 原田美枝子ー映画に生きて生かされて」。

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