2024年も半分が過ぎ、映画館で配信で、たくさんの作品が公開されています。1年の折り返し点でちょっと立ち止まって、今年の秀作、話題作をおさらいしてみませんか。ひとシネマ執筆陣が、上半期の作品からお勧めの5本を選びました。
2024.7.09
不撓不屈 ばいきんまんの雄姿 伊藤弘了
「ゴールド・ボーイ」(金子修介監督)
「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章/後章」(黒川智之監督)
「悪は存在しない」(濱口竜介監督)
「関心領域」(ジョナサン・グレイザー監督)
「それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン」(川越淳監督)
快作、傑作、怪傑……愛と勇気のその先に
並びは公開順である。
「ゴールド・ボーイ」は映画の楽しさが詰まった快作。「デデデデ」は日本のポップカルチャーの粋を集めた傑作。「悪は存在しない」と「関心領域」はそれぞれの仕方で現代映画の極北に至った怪傑作。この2作のいずれをも「ひとシネマ」の連載「よくばり映画鑑賞術」で取り上げられなかったのは、痛恨の極みである。
2歳半の娘とともに鑑賞した「アンパンマン」は意想外の収穫だった。絵本の世界に入り込んだばいきんまんは、難敵「すいとるゾウ」への雪辱を果たすべく、ルルンの助力を仰ぎながら(というより彼女の不手際による妨害をはねのけながら)、ブリコラージュ精神を遺憾無く発揮してついに木製の「だだんだん」(バイキンメカのひとつ)を作り上げる。幾度倒されようともそのたびに立ち上がり、果敢に挑みかかる不撓(ふとう)不屈のばいきんまんの雄姿は、娘の紅涙を絞って余りあった。