プチョンファンタスティック映画祭企画マーケット=撮影:宮脇祐介

プチョンファンタスティック映画祭企画マーケット=撮影:宮脇祐介

2023.7.13

プチョン国際ファンタスティック映画祭リポート:スクリーンのない映画祭、企画マーケット

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

宮脇祐介

宮脇祐介

6月30日韓国・プチョン市高麗ホテルで行われた「メード・イン・アジア・フォーラム・セッション1 韓日映画フォーラム『パンデミック』時代の映画産業 問題と解決方法」に出席したTBSテレビ映画事業部・辻本珠子さんは、企画マーケットにも登録をしていた。同ホテルの3階で行われたマーケットには世界各地から映画企画を携えた監督やプロデューサーが、これも各地から登録した出資者に個別にアポイントを取って会場でアプローチしていく。辻本さんの元には今回日本同様特集されたノルウェーからと特別参加のイギリスから2件のプレゼンテーションのリクエストがあった。この席に両者の許可を得て立ち会ってみた。
 
7月2日午前イギリス制作会社イエロー・ピル・フィルムズのプロデューサー・フィリップ・ポレスさんら3人から映画「レイン・キャッチャー」の企画が提案された。

この物語はイギリスをロケ地として撮影されるディストピア(暗黒世界)ムービー。多国籍の出演者を検討しているため、日本などアジアの出資者を求めているので連絡をしたという。ゲーリー・デービーという有名なアメリカのキャスティングディレクターに配役を一任していることを強調し、決定している主役やイメージキャストを主に説明した。その後、作品の一部を日本で撮影することも可能であることを示唆した。余談だが、韓国の出資者はよく同国での撮影のリクエストをしてくるそうだ。例えばアメリカのコリアンタウンのシーンを明洞で撮影すると、韓国国内興行収入に口コミのプラスの要素が働くからだとの通訳の談があった。辻本さんからは日本でのリメークの優先権や日本国内での配給についての質問をした。もちろん出資の条件でリメークの優先権は与えるし、配給については出資者が国内配給をしても、他の配給会社に作品をセールスしても良いので意向を優先するとの答えが返ってきた。日本の漫画やアニメーションに影響されたとチームメンバーの話だが、日本の映画マーケットは未知の世界なのでぜひともいろいろ教えてほしいとの話で締めくくられた。
 
午後から行われたノルウェーの映画監督サラ・サレラさんとのミーティングでは、彼女自身が3年間日本に住んでいて、文化において大きな影響を受けたことを話し和やかに説明が始まった。約30分、映画のプロットの説明に終始した。

生き方の相違から心を残して離婚を決意した夫婦が最後の旅に出た。その旅先を日本や韓国などの言語が通じない場所でロケーションしたいと思ったので辻本さんに連絡をしたという。その旅先で事故にあう夫婦は妻が亡くなってしまう。言語の違う場所で大切な人を亡くすことによって、より主人公の混乱が引き出されるとの意図を説明した。お互いに心を残したままの別れのため、主人公は妻のゴーストに出会い離れられなくなってしまうのだが・・・・・・。どうやって彼女の喪失感を克服していくかというのが映画の肝だと力説した。辻本さんも、「喪失感の克服」というテーマは世界に共通するものだと共感を寄せ面会が終わった。
 
辻本さんは「両国ともに、日本マーケットを重要視してこその企画ピッチだった。今回ピッチに参加して、日本の映画市場の実態がつかみづらいと感じていることがよく分かった。TBSは今まで海外共作を行ってきていなかった分、他社と比べて今は組織も小さく、自由度が高いので、国際製作に向いているのかもしれない」と感想を語った。

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ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

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