「島守の塔」©2022映画「島守の塔」製作委員会

「島守の塔」©2022映画「島守の塔」製作委員会

2023.6.23

「島守の塔」のホール上映が全国で実施中、沖縄修学旅行前に見た中学生の声

第二次世界大戦中の最後の官選沖縄知事・島田叡、警察部長・荒井退造を主人公とした「島守の塔」(毎日新聞社など製作委員会)が公開される(シネスイッチ銀座公開中、8月5日より栃木、兵庫、沖縄、他全国順次公開)。終戦から77年、沖縄返還から50年。日本の戦争体験者が減りつつある一方で、ウクライナでの戦争は毎日のように報じられている。島田が残した「生きろ」のメッセージは、今どう受け止められるのか。「島守の塔」を通して、ひとシネマ流に戦争を考える。

ひとしねま

ひとシネマ編集部

2022年7月、東京・銀座シネスイッチで上映後、全国に拡大公開し全国36都道府県、60館で上映した「島守の塔」(毎日新聞社など製作委員会)は現在、配信のほか、全国でホール上映が行われています。
戦争の悲惨さを後世に伝えるため、ひとシネマでもホール上映の募集を行っています。(詳細は文末)
主人公・島田叡の故郷である兵庫県・神戸市立西神中学校では沖縄への修学旅行の前に映画鑑賞。担当の藤原智代先生にリポートを送ってもらいました。
 
沖縄への修学旅行は教師生活で6回目になります。島田叡氏の存在を知ったのは、恥ずかしながら4回目、今から10年ほど前のことになります。同じ神戸出身の人物としてぜひ取り上げたいと思いつつ、なかなかうまくできませんでした。昨夏、映画が公開された時には「これだ!」と思いました。残念ながら公開中に見に行くことができなかったので、DVD等(未発売)の発売を待っていました。なかなか発売されずに諦めていたところ、近隣中学校で鑑賞したとの情報が。そこで製作委員会に問い合わせをして今回の鑑賞にいたりました。
 
先に鑑賞した「さとうきび畑の唄」にはない衝撃的な映像に、物の豊かな時代にのんびり育った中学生が耐えうることができるのかについては悩みました。が、結果的には鑑賞させて正解でした。
 
島田叡氏が苦悩しながらも県知事の命を受け、遠く離れた沖縄で県民のために尽くす姿から、生徒たちは上に立つ者にも苦しみがあったことを学びました。自分たちと同じ年ごろのひめゆり学徒隊たちが、その惨状から目をそらさずに懸命に医療に携わる姿に尊敬の念を抱きました。そして実際にひめゆり平和祈念資料館でその手記を読むことで、友達と当たり前のように学校生活を送っていることが当たり前ではないことに気づきました。また、実際のガマを訪れたことで、住民が身を潜めたり彼女たちが献身的に医療活動していたりしたガマの中の実際は、足元が悪い上に空気も薄く、明かりを消すと自分が目を開けているのか閉じているのかも分からないほどの暗闇であったことを知りました。そして、平和祈念公園では、平和の礎に刻まれている沖縄戦での犠牲者の人数とともに、多くの人たちが身を投じたとされる摩文仁の丘の高さに圧倒されました。

 
最近の学生は、視覚や聴覚から得る情報にたけているとよく言われます。今回の鑑賞があったからこその学びがたくさんありました。道徳教材から想像力を働かせて考えること、その想像と視覚をあわせること、そして事前学習で得た知識をもって沖縄の土地に立ち、エメラルドグリーンの海を見ました。資料館やガマから自分で見聞きし、考え、感じたこと、その全てを合わせることで、生徒の沖縄や平和への思いが大きく変化したことが、作文やアンケートから手に取るように分かりました。中学生の感性鋭い時期によい学習ができました。
 
生徒の声(抜粋)
・「生きろ」という三文字の言葉にどれほどの意味が込められていたのか、どれほどの人の心を揺るがせたのかが映画からも伝わってきました。
・すべての人が「お国のため」という考えをもっていなかったこと。もっていたとしても、それよりも命の方が大切だと気付いた人がいたということを知った。
・沖縄戦は広島、長崎とは違い、毎日行われる地上戦だったので、おびえながら毎日を過ごしていたと思うと、心苦しくなりました。4人に1人がなくなっていたことから戦争の怖さをあらためて感じました。
・15歳の戦闘服を着た少年が、島田叡さんに「戦争が終わればもう一度、学校に行ける? 僕はもっと勉強したい」と言っているシーンが一番心に残りました。私は、普段の授業がしんどいなと思うことがあります。けれどこのシーンをみて、私が当たり前のように受けている授業はこの少年にとっては当たり前ではなかったんだと思い、学校に行くことができている事は幸せだなと改めて思いました。
 
ホール上映希望の方は
toiawase_hitocinema@mainichi.co.jp 宛て「『島守の塔』上映希望」の表題でメールにてお送りください。
追って詳細をお送りいたします。

ライター
ひとしねま

ひとシネマ編集部

ひとシネマ編集部