「〝それ〟がいる森」に出演した松本穂香=西夏生撮影

「〝それ〟がいる森」に出演した松本穂香=西夏生撮影

2022.9.29

インタビュー:松本穂香 初めてのホラー映画「楽しみました」 「〝それ〟がいる森」

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勝田友巳

勝田友巳

女優が怖がる顔を美しく撮らせたら、中田秀夫監督の右に出る者はいない。松嶋菜々子、前田敦子、白石麻衣ら、当代の人気者を恐怖のどん底に突き落としてきた。「〝それ〟がいる森」では、「もともとホラー映画好き」という松本穂香がその〝標的〟に……。
 


 

目の開き方まで演出された恐怖顔

中田監督の映画も見ていたという松本。その演出術に身を委ね「楽しみました」。
 
「中田監督は細かい部分まで演出してくれたので、全力で応えられたらいいなと思いました」。怖がっている時の息の吐き方、目の見開き方。「ホラー映画をたくさん撮られているので、こういう表情でというのが監督の中で見えているんでしょうね」
 
オレンジ農家を営む淳一(相葉雅紀)と小学生の息子の周囲で、次々と怪奇現象が起きる。松本が演じたのは、息子が通う小学校の教師役。ホラー映画らしく、えたいの知れない存在に襲われて、おびえ、おののく。
 
とはいえ、やられっぱなしではない。終盤には、子どもたちを守るために体を張って大活躍。「こういう作品とはなかなか出合えない。監督を信頼して演じました」


 ©2022「〝それ〟がいる森」製作委員会

共演・相葉雅紀の親子愛「ステキだな」

初めてといえば、相葉との共演も。「優しくてナチュラル。相葉さんがいてくれたから、現場も和やかな良い空気感でできたのかな」。中田監督といえば、「リング」などでJホラーの先鞭(せんべん)をつけ、近年は「スマホを落としただけなのに」シリーズや「事故物件 恐い間取り」など新感覚のホラーも開拓。「〝それ〟がいる森」も親子愛がもう一つのテーマだ。「相葉さんが頼りがいのあるお父さんになっていくところが、ステキだなと思いました」
 
大阪での高校時代に演劇部に所属して演じることの快感に目覚め、在学中に事務所に所属。「モデルではなくて女優。漠然となりたいなと。演じることが楽しかったんだと思います。チャレンジしてみるという考えで、やって損はないとオーディションを受けたって感じですね」
 
卒業後上京して、本格的に活動開始。「高校の時は女優さんの華やかなとこだけを見てて、具体的には想像してなかったと思う。想像と全然違うこともたくさんあるし、これからもあるだろうと思います」
 
舞台に立つ勇気や、人前で自分を解放する思い切りなど、高校時代の体験は今につながっている。周囲の女優たちの輝きも刺激だ。「ステキな人をたくさん見、憧れます。ずっと見てきた役者さんとお芝居したり、アドバイスをもらったりするのは楽しい」


 

役の幅広げ、ありがたいです

20代半ば、役の幅がどんどん広がる時期だ。ラブストーリーやコメディー、家族ものから時代劇まで、出演作のジャンルは幅広い。高校の制服も着られるし、今回のように教師役に回る機会も出てきた。2022年はネットフリックス映画「桜のような僕の恋人」で難病に苦しむ美容師、「今夜、世界からこの恋が消えても」では主人公の姉役で、物語の鍵を握る。ドラマ、CM出演も相次いでいる。役柄に成長を感じさせながら、活躍が続く。
 
とはいえ、本人は目の前のことに夢中だ。「いろんな役をやらせていただいて、ありがたいです。でも意識しては変わってないですかね。毎回違いますから。年代の移り変わりも、感じているというほどではありません」
 
高校の演劇部時代、マグロのかぶり物で舞台に上がり笑いを取った逸話は語り草で「コメディーも好き」というが、取材中は物静かで言葉少な。「あまり高いテンションではない方かな」。「〝それ〟がいる森」とは対照的なたたずまい。これからの抱負を聞くと「幅広くいろんな役を、楽しんで演じられたらいいな」と控えめに。
 
「〝それ〟がいる森」は全国で公開中。

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

カメラマン
ひとしねま

西夏生

毎日新聞写真部カメラマン