5年ぶりのシリーズ新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」が7月21日に公開される。主演のトム・クルーズの体を張ったアクションは、作品を重ねるごとに派手になり、とどまるところを知らない。第1作から27年、イーサン・ハントはどこから来て、そしてどこへ向かうのか。ひとシネマが、シリーズ全作を解説、見どころを紹介します。最新作鑑賞前の復習にどうぞ!
2023.7.17
最新作までの進化の基盤となる4作目「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」
トム・クルーズが初めて製作・主演を手掛けた「ミッション:インポッシブル」(1996年)から数えてシリーズ4作目にあたる「ゴースト・プロトコル」。15年の時の流れで飛躍的に進歩した映像技術と、なにより前3作における試行錯誤が実を結び、後に続く最強スパイアクションの〝核〟が確立したエポック作だ。
というのも1作目は原案となるテレビシリーズを尊重。たとえばIMF(不可能作戦部隊)に所属する諜報(ちょうほう)部員イーサン・ハントもその仲間も、テレビシリーズのキャラクターを少なからず踏襲したことでレトロな雰囲気に。さらにサスペンスの大御所ブライアン・デ・パルマを監督に迎えたが、イマイチ、スピード感に欠ける演出だった。
そこで2作目は、絶大な人気を誇っていた香港アクションの雄ジョン・ウーを起用。確かにウー監督は「男たちの挽歌」シリーズでは実弾もぶっ放す猛者だけにトム自身が危険なスタントをこなすスリリングなシーンも盛り込まれスピード感が増した。が、いっぽうでウー監督の叙情的な演出とトムの目指すスタイリッシュなスパイ像がかみ合わなかった。
そこで3作目は「アルマゲドン」(98年)の脚本などで注目されていた若きJ・J・エイブラムスに白羽の矢を立て、脚本も演出もトム自身の意見を色濃く反映。テレビシリーズのイメージを希薄にした、新しい時代に生きる新しいスタイルの 〝スパイ=イーサン・ハント〟創りが試みられたのだ。
政府やIMFのバックアップなしで任務に携わることになるイーサン・ハント
そして4作目の「ゴースト・プロトコル」。
イーサンのミッションは核弾頭ミサイル発射コードの奪還。しかし、その任務遂行のために潜入したクレムリンで、アメリカとロシアの間で核戦争をもくろむ戦略家=コードネーム<コバルト>に先を越され、クレムリン爆破事件のぬれぎぬを着せられてしまう。しかもアメリカ政府は対ロシア政策として「ゴースト・プロトコル」を発動させ、IMFを解体。政府による関与を否定し、イーサンは政府やIMFのバックアップなしで任務を継続することになる……。
まず「ゴースト・プロトコル」の意味は、アメリカ政府が組織を存在しないもの(ゴースト)として扱う規定(プロトコル)のこと。元ネタのテレビシリースでおなじみの「例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しないから、そのつもりで」という危機的状況に、今回のイーサンは陥ったということだ。
仲間たちとの信頼と絆が深まるプロセスの素晴らしさ
しかし、ここからが4作目の素晴らしいところ。組織や規則を乗り越えた、いわゆる信頼という絆で結ばれる仲間が集うプロセス。
1作目から登場しているルーサー・スティッケル(ビング・レイムス)は、〝イーサンと妻ジュリアの秘密〟を共有する、いわば相棒的な存在だから協力は当たり前。注目すべきは、前作ではイーサンの行動を内部でサポートしていたメカ専科のベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)が現場での任務に初参加。イーサンに同伴してクレムリンに潜入するときには「現場仕事でお前と組むのが夢だった」と大喜び。
だからこそ、イーサンが要求する超・危険な不可能をあたふたしつつもきっちり可能にしていく名コンビぶり。後のシリーズでも緊張感あふれる連続アクションの合間にホッと笑わせてくれる、お約束のコンビネーションとなった。
そして、もうひとりの新加入はIMFの分析官ウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)。クレムリン滞在中にIMFが解体されたことでやむなく行動をともにするうちに、イーサンの過去に自分が関係していることを知り信頼の絆を結ぶことになり、次作にも登場することに。
洗練された現代のスパイ・アクションは見逃し厳禁!
ともあれ、それぞれが専門分野をフルに生かしてサポートしあい、仲間の死を回避しようと必死になる姿は、非情なスパイ大作戦ではなく、ある種の群像劇の趣もほんのりあって味わい深い。
もちろん、シリーズの一番の売りはアクションだ。ドバイ、プラハ、モスクワ、ムンバイなど世界各地を飛び回りスタントを使わずトム自身が演じる危険なアクションの数々はエスカレートするばかり。とりわけドバイにある超高層ビル=ブルジュ・ハリファの外壁をよじ登るシーンは圧巻! アクション映画史に残る傑作名場面だ。
ちなみに、ブラッド・バード監督は「Mr.インクレディブル」(2004年)などで知られるCG(コンピューターグラフィックス)アニメ出身。それだけに、実写映画初監督となる本作は、過去作3作よりCGが多用されスタイリッシュな仕上がり。いわゆる洗練された現代のスパイ・アクション映画が誕生した瞬間だった。しかも以後のシリーズは、この4作目を基盤に進化を遂げながら続いてきたのだから、見逃し厳禁です!
「ミッション:インポッシブル」6ムービー・コレクション
[4K ULTRA HD + Blu-ray セット] 2万5080円(税込み)
※2023年7月現在の情報です。
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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