「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」より  ©2018 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」より  ©2018 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

2023.7.13

ざっくり解説「M:I」シリーズ27年の進化と変化 より高く!より遠く!より深く!

5年ぶりのシリーズ新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」が7月21日に公開される。主演のトム・クルーズの体を張ったアクションは、作品を重ねるごとに派手になり、とどまるところを知らない。第1作から27年、イーサン・ハントはどこから来て、そしてどこへ向かうのか。ひとシネマが、シリーズ全作を解説、見どころを紹介します。最新作鑑賞前の復習にどうぞ!

勝田友巳

勝田友巳

シリーズ第1作「ミッション:インポッシブル」(1996年)から27年、最新の第7作「デッドレコニングPART ONE」が7月21日、世界同時公開される。CIA(米中央情報局)の極秘部隊IMF(Impossible Mission Force=不可能作戦部隊)のエージェント、イーサン・ハント=トム・クルーズが大活躍するこのシリーズ、アクションの限界を広げつつ物語の深みも加え、進化と変遷を遂げてきた。その軌跡、駆け足で振り返ってみよう。
 

「ミッション:インポッシブル」より
©1996 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.


トム・クルーズ初のプロデュース作

シリーズは、クルーズが長年の仕事のパートナー、ポーラ・ワグナーと設立した「クルーズ・ワグナー・プロダクション」の第1回作品として産声を上げた。60年代の人気テレビシリーズ「スパイ大作戦」の映画化で、パラマウントの企画自体は何年も前に動き始め、イーサン・ハント役にはジョージ・クルーニー、ブルース・ウィリス、ジョン・トラボルタら多くの名前が挙がっていたという。
 
企画は結局、「子供のころからのテレビ版のファン。彼らが使うガジェットにワクワクする」というクルーズの手に落ちる。「トップガン」(86年)で大ブレークし、「レインマン」(88年)、「7月4日に生まれて」(89年)などシリアスドラマでも好演し、マネーメーキングスターの地位を確立していたクルーズは、パラマウントの示した予算を上回る8000万ドルをかけアクションに振り切った娯楽作に挑んだ。
 

「ミッション:インポッシブル」より
©1996 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

サスペンス強調したデ・パルマ「ミッション:インポッシブル」(1996年)

第1作を任されたのは、スリラーの名手、ブライアン・デ・パルマ監督。大ぶりなアクションを黒幕捜しのサスペンスで盛りあげた。若手エージェントのハントはフェルプス率いるチームで作戦に臨むが、任務は失敗。彼以外全員が殺害され、裏切り者にされてしまう。ハントはひそかに仲間を集め、真相に迫っていく。
 
シリーズの原形は、この1作目で出来上がっている。身内の組織から追われる羽目に陥りながら、仲間と共に孤立無援の戦いに挑む。そんな筋立ての物語が、クルーズの身体能力を生かした、アイデア豊かで斬新なアクションと共に展開する。今作のアクションの白眉(はくび)は、重さと温度の変化に反応して警報が鳴るCIAのデータ保管室に、天井からワイヤでつり下げられて入り込む場面。したたる汗の1滴を手のひらに受け止めるショットは見事だった。
 
ワイヤでつられて下降するアクションは、これ以降のシリーズで何度も繰り返される。クライマックスでは疾走するユーロトレインの上でトンネルをくぐりながらの大乱闘だが、このアクションも、最新作で数段スケールアップして再現された。リクルートされて加わった天才ハッカー、ルーサー(ビング・レイムス)は、最新作までハントと長い付き合いとなる。
 
ラロ・シフリンの音楽と導火線の火が走って行くオープニング、「今回の任務は‥‥‥」で始まり「なおこのテープは自動的に消滅する」で終わる指令のスタイルはドラマ版を引き継いで今に続く。しかしドラマ版俳優は1人も出演せず、ドラマ版のリーダーだったフェルプスの役どころには不満も続出。オリジナルに敬意を示しつつ決別も宣言した形となった。
 

「M:I-2」より
©2000 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

ジョン・ウー節さく裂の異色作「M:I-2」(2000年)

「M:I-2」(2000年)で、ハントは殺人ウイルスを手に入れたIMFの裏切り者と対決する。香港からハリウッドに進出したジョン・ウー監督によるこの第2作は、シリーズの中でも異色の出来となった。日本では興収97億円と、シリーズ最大のヒット作。
 
ウー監督による「男たちの挽歌」のチョウ・ユンファのごとく、ハントは2丁拳銃をぶっ放し、ダンスのようなバイクアクションを見せ、クライマックスの肉弾戦は香港カンフーそのまま。これ見よがしのスローモーションに、ジョン・ウー映画のトレードマーク=ハトも飛ぶ。リアリティーより様式美を優先した華麗な映像は、まごうことなき〝ジョン・ウー映画〟なのである。ロマンチックな場面もほかでは見られない濃密さだった。
 

「M:i:Ⅲ」より
©2006 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

新機軸のアクションと人間的苦悩 「M:i:Ⅲ」(06年)

監督の個性が強く出た2作の後、クルーズは「M:i:III」(06年)の監督にJ.J.エイブラムスを起用する。「LOST」などテレビシリーズが評判だったものの、映画は初めて。エイブラムスは「前2作は自分が見たい『スパイ大作戦』ではなかった」と、アクションに新機軸を打ち出し、ハントの人間的苦悩にも踏み込んでいく。
 
引退して教官となったハントは表向きは地下鉄職員として働き、ジュリア(ミシェル・モナハン)との結婚も控えていた。しかし誘拐された教え子奪還作戦に参加したことをきっかけに現場に復帰、冷酷な武器商人デイビアンと対決する。
 
息もつかせぬという形容そのまま、アクションを連続してたたみかけた。一方で、ジュリアとの幸せと世界を救うことの間で葛藤するハントの内面も念入りに描写し、以降のシリーズにつないでいく。手探りの2作を経てクルーズはシリーズを手中にし、路線を見極めたようだ。
 
ところでこの時期のクルーズ、ケイティ・ホームズとの交際で舞い上がって奇行に及んだり信仰するサイエントロジーにのめりこんだり、お騒がせセレブとして名をはせていた。大人ぶりを発揮する今の姿からは、ちょっと想像できないが。
 

「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」より
©2011 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

メンバー定着安定路線「ゴースト・プロトコル」(11年)

11年の第4作「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」は、第3作の深刻な雰囲気から微調整。エイブラムスが製作に回り、監督は「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」などのアニメーションをヒットさせたブラッド・バードに交代した。第3作でIMFの内勤として初登場したベンジー(サイモン・ペッグ)が現場に転属し、コミックリリーフ的存在として定着する。次第に常連が増え、物語に連続性が生まれてきた。
 
ハントはワナに落ち、クレムリンを爆破したテロリストにされてしまう。IMFは解散させられ、例によって追われる身となりながら、核兵器で世界を破滅させようとする科学者と対決する。アクションの見せ場はドバイの超高層ビル。垂直の壁面を上り、駆け下りる場面は何度見ても胸躍る。クレムリンの爆破や砂漠の砂嵐などCGを使いつつ、クルーズの全力疾走やカーチェイスはますます力が入っている。
 

「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」より
©2015 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

敵は共通「ローグ・ネイション」(15年) 「フォールアウト」(18年)

4年後の第5作「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」と、続く18年の「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」とは戦う敵も共通し、2部作の趣だ。08年の「ワルキューレ」でクルーズと組み、「ゴースト・プロトコル」の脚本にノンクレジットで参加したクリストファー・マッカリー監督は、ここから4作連続登板。
 
ハントの相手は、各国の元スパイを集めた組織「シンジケート」だ。組織を率いる狡猾(こうかつ)なレーンは、ハントの先回りをしながらテロ事件を起こし、世界転覆を図る。当初一匹おおかみだったハントはルーサー、ベンジー、それに今作から加わったイルサ(レベッカ・ファーガソン)と固定メンバーが増えるにつれて、「大義」とともに「友情」が重要な行動原理となっていく。
 
クルーズが「前作以上」を目指すアクションは、さらに加速。「ローグ・ネイション」で飛行機の外側にしがみついたまま離陸し、「フォールアウト」ではヘリコプターにぶら下がって飛んでいく。「フォールアウト」は脚本が完成しないまま撮影が始まり、第4、第5作に出演したジェレミー・レナーは「アベンジャーズ」シリーズとのスケジュール調整ができずに降板。撮影中にはビルの屋上を走っていたクルーズが、隣のビルに飛び移る際に足首を骨折して撮影が中断する事故もあった。
 

「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PARTONE」より
©2023 PARAMOUNT PICTURES.

アクションも尺も成長重ね

そんなトラブルをものともせず、最新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPARTONE」では、1年以上かけてトレーニングを重ね、断崖絶壁からオートバイに乗ったまま大ジャンプを披露している。あくなき挑戦に頭が下がる思い。
 
新たな敵は、暴走する人工知能。ハントの先を読み人間を操る見えない相手に、IMFも大苦戦である。
 
ところでこのシリーズ、次第に尺が伸びている。第1作は110分だったが、第4作で132分、第6作は147分。最新作は163分でまだ半分だ。これも観客をたっぷり楽しませようというサービス精神の表れか。もっともハントと一緒に観客も、危機また危機をくぐり抜けていく。長いようでもあっという間だ。
 
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PARTONE」は7月21日(金)より全国ロードショー
 

 


「ミッション:インポッシブル」6ムービー・コレクション
[4K ULTRA HD + Blu-ray セット] 2万5080円(税込み)
※2023年7月現在の情報です。
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 1996, 2000, 2006, 2011, 2015, 2018, 2023 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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