「M:I-2」より   ©2000 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

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2023.7.15

コロナ禍を予見? 耐えに耐えるイーサン・ハントに高倉健を見た 「M:I-2」

5年ぶりのシリーズ新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」が7月21日に公開される。主演のトム・クルーズの体を張ったアクションは、作品を重ねるごとに派手になり、とどまるところを知らない。第1作から27年、イーサン・ハントはどこから来て、そしてどこへ向かうのか。ひとシネマが、シリーズ全作を解説、見どころを紹介します。最新作鑑賞前の復習にどうぞ!

木村光則

木村光則

シリーズ第1作「ミッション:インポッシブル」が公開された1996年に、私は社会人生活を踏み出した。当時もインターネットは存在し、最先端の企業では使われていただろうが、社会には根付いていなかったはずだ。私が就職した新聞社(毎日新聞ではない)では、記者はまだ原稿を手書きしていたし、社内には活版印刷の活字を操る職人さんもいた。まだまだアナログ技術が社会全体に残っていたのだ。
 

ネット駆使した1作目の斬新さ

そんな時代に、「ミッション:インポッシブル」ではインターネット通信が多く登場し、ストーリー展開にも重要な役割を果たす。最新のテクノロジーが飛び出す物語は、めちゃくちゃ斬新だった。
 
そして「M:I-2」(2000年)は、「ウイルス」を巡るストーリーである。ある製薬会社が20時間以内に処置薬を服用しないと死に至る「キメラウイルス」と対処薬「ベレロフォン」を開発する。キメラウイルスを全世界で感染拡大させて薬への需要を生み、大もうけしようという製薬会社の陰謀とそれを横取りしようとする連中を、イーサン・ハント率いるIMFチームが阻止するという物語だ。
 

絵空事でないウイルステロ

全世界が新型コロナウイルス禍に見舞われた今、改めていろいろと考えさせられる。映画の公開時、私は休日に映画館でこの作品を楽しんだだけで、もちろん20年後に世界でこんなにウイルス禍が猛威をふるうとは思ってもいなかった。しかし映画や文学は数十年の時を経て形を変えて現実となったり、社会の問題を予知したりするものだ。
 
「キメラウイルス」と「新型コロナウイルス」。何となく響きも似ている。新型コロナウイルスは陰謀によって生み出されたものではないと思うが、もし誰かが何らかの意図を持って致死性のあるウイルスを開発し、それを世界中に広めたとしたら……。とてつもない災苦が全世界に広がるだろう。そして、それは今のバイオ技術を考えれば実現不可能なことではないのだ。だからこそ、そのような行為を決して許さない世界的な取り組みが必要だ。本作を見直す中で、そんな思いも巡らせた。
 

アジアの香り漂う異色作

さてそんな予見性はさておき、「M:I-2」はストーリーの芯にラブロマンスがしっかり描かれている点や、ジョン・ウー監督らしくアジアのカンフーやプロレス技?を取り入れた独自のアクションが異色だ。
 

三角関係利用した作戦

まずロマンスだが、本作では任務の条件として、盗みのプロの女ナイア・ホール(ダンディ・ニュートン)をチームに引き入れることが提示される。彼女が、ターゲットである男ショーン・アンブローズ(ダグレイ・スコット)とかつて付き合っていたというのがその理由なのだが、ハントは彼女に普通には接触しない。ホールの盗みの現場に邪魔に入ったり、カーアクションを繰り広げたりしながら、徐々に近づいていく。丁々発止を繰り広げる中で2人は互いにひかれ合い、そして結ばれる。
 
ハントはホールを利用してアンブローズの秘密を暴く作戦に難色を示し、上司(アンソニー・ホプキンス)に抵抗するのだが、そこは「任務」優先。ハントはしぶしぶ上司に従い、ホールもハントが言うなら仕方ないと任務を引き受ける。
 

ウエットなアクションにジョン・ウー節

ここから先の展開は映画を見てのお楽しみだが、やがてホールが見せる愛する男のための自己犠牲的な行為と、それを見たハントの憤怒、そこからの爆発的なアクションはどこか東洋的な匂いがする。つまり、高倉健主演の「昭和残俠伝」シリーズやブルース・リー主演の「燃えよドラゴン」などで、主人公が耐えに耐え、「堪忍袋の緒が切れた」状態に達してからの感情の爆発と破壊的なアクション。若干ウエットなこのエモーションの高まりはアジア人のウー監督ゆえだろうか。
 
やがて、ハントと敵役のアンブローズの格闘シーンへつながっていくが、そこでは、プロレス技としか思えないアクションが繰り出される。まずはハントが飛び上がってアンブローズの後頭部を蹴り上げるアントニオ猪木もびっくりの〝延髄蹴り〟!
 
さらにハントがジャンプして両足で相手の胸を蹴り飛ばすドロップキック(ジャイアント馬場の場合は「32文ロケット砲」と呼ばれていた技だ)! さらに、これはカンフーだね、というアクロバットな技も繰り出され、ウー監督一流のアクション技がさえわたる。
 

100回死んでるイーサン・ハント

「ミッション:インポッシブル」はしびれるシリーズだ。「実現不可能な任務を成し遂げる」というコンセプトが「任務」好きな日本人の心をくすぐる。映画が始まれば、次々と起きるどんでん返しのストーリー展開にくらくらし、ハントが繰り広げるおよそ人間離れしたアクションの数々(凡人ならシリーズ全体で数百回は死んでいるだろう)に圧倒される。クライマックスで流れるあの高揚感あふれるサントラもいい。
 
加えて予見性。最新作「デッドレコニングPART ONE」では、AI(人工知能)が敵役だという。さて、どんな未来を私たちに見せてくれるのか。今後のシリーズ作品にも期待せずにはいられない。
 
 


「ミッション:インポッシブル」6ムービー・コレクション
[4K ULTRA HD + Blu-ray セット] 2万5080円(税込み)
※2023年7月現在の情報です。
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 1996, 2000, 2006, 2011, 2015, 2018, 2023 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.
 

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ライター
木村光則

木村光則

きむら・みつのり 毎日新聞学芸部副部長。神奈川県出身。2001年、毎日新聞社入社。横浜支局、北海道報道部を経て、学芸部へ。演劇、書評、映画を担当。

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