「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」より ©2015 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」より ©2015 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

2023.7.19

ハラハラ、ドキドキ、ワクワクの三拍子そろった「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」

5年ぶりのシリーズ新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」が7月21日に公開される。主演のトム・クルーズの体を張ったアクションは、作品を重ねるごとに派手になり、とどまるところを知らない。第1作から27年、イーサン・ハントはどこから来て、そしてどこへ向かうのか。ひとシネマが、シリーズ全作を解説、見どころを紹介します。最新作鑑賞前の復習にどうぞ!

堀陽菜

堀陽菜

なんだこのテンポ感!!
オープニングから飛行機に飛び乗るというド派手なアクションで、一気に心をわしづかみにされた。ストーリーが続くにつれて「え、そう行く⁉」「うわっ、そうなるの⁉」の連続。主人公イーサン・ハントが巻き起こす展開が予測不能なのがとにかく面白い。「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」は最初から最後までハラハラ感、ドキドキ感、ワクワク感の三拍子がそろっている作品だ。
 
まずは〝ローグ・ネイション〟が気になった。直訳すると〝悪党の組織〟と訳すことができるそうだ。イーサン・ハントが率いるIMFが、まさにローグ・ネイションである「シンジケート」と名乗る無国籍スパイに立ち向かう。
 
Z世代と呼ばれる最近の若者は5秒以上の同じ映像を見続けることができない、みたいな記事を多く目にするようになった。まるで私たちが飽き性の象徴のように語られることが増えたが、私はあえて声を大にして言う。
 
「はい、その通りですよ(泣)!」
 
まさに、私たちZ世代にとってはショート動画と呼ばれる短い映像が身の回りにあふれすぎている。暇さえあればTikTokを見ているし、YouTubeは6分以上の動画でも長いと感じてしまう。〝とにかく早く簡潔に、だけど面白い〟ものしか受け付けない体になっている。
 
そんな私たちにクリティカルヒットするぐらい滑らかなテンポ感で1秒たりとも飽きさせないのが「ミッション:インポッシブル」シリーズだ。ド派手なアクションは当たり前。そんなアクションの中に予想もできないイーサン・ハントの切り抜け方が見物である。
 

インポッシブルで迫力あるアクションにハラハラ

 個人的に「ミッション:インポッシブル」って本当に作品名が単純すぎる。「Impossible(インポッシブル‥‥‥不可能な)なミッション」ってドストレートすぎるだろうって毎回思う。だけど、本当に毎回インポッシブルすぎるミッションばかりで気持ちがいいほどハラハラする。そしてそれをクリアしてしまうイーサン・ハントがかっこよすぎて悶絶(もんぜつ)する。いや、それは言い過ぎだろうと突っ込まれそうだが、作品を見た人はうなずいてくれるだろう。
 
作品序盤、ハントが組織に捕まり両手を鉄パイプにつながれてしまうシーンがある。こんなピンチの場面では、誰もが真っ先に手錠を外すための鍵に集中するだろう。しかし、ハントは違った。己の筋力をフルに使い、重力を無視してポールを上がっていく‥‥‥と、なんとも文章では説明できない脱出方法だ。「おいおい、SASUKEじゃないか‥‥‥」と日本の某人気テレビ番組に出てきそうな動きばっかりしている。
 
この脱出シーンはまだ序盤に過ぎず、水中での3分ミッション、オペラ劇場の舞台裏での格闘、あのBMWをこんなにもボロボロにしていいのかと心配になるぐらいの迫力あるシーンも見どころである。聞いただけでも、「いや、無理だろ」とツッコミを入れたくなるミッションだ。
 
 

「仲間」の存在の大きさが「ローグ・ネイション」の特徴

 ミッション:インポッシブルでは「仲間」という存在がとても明確に描かれている。アクションが派手なだけに意外と忘れられがちだが、描かれている人間模様にも注目したい。
 
ハントが仲間のベンジー(サイモン・ペッグ)を危険にさらすまいと、自身の逃亡から身を引くように言うも、ベンジーは「俺はお前の友達だろ」と訴え作戦に参加するシーンがある。ベンジーの発言が純粋すぎて好きだ。ここまで率直に、小学生でも分かるような‥‥‥と言えば言葉選びが悪いかもしれないが、それぐらい分かりやすい友情はあまり最近出会わない感じがする。
 
ベンジーだけでなく、ルーサー(ビング・レイムス)も同様にハントへの友情を強く抱いているシーンがある。スパイ映画とは、誰が敵で誰が味方かわからないハラハラ感が醍醐味(だいごみ)であるが、ここまで信頼できる「仲間」という存在が出てくるのは作品の大きな特徴ではないだろうか。
 

ショート動画を見慣れたZ世代もきっと集中して見ていられる

 もちろん、〝だましだまされ〟というスパイ映画のメインディッシュもちゃんと用意されている。最後まで敵か味方かわからないイルサ(レベッカ・ファーガソン)という存在。そんな物語の鍵となる人物に、時には感謝したり、時には恨んだり、感情のジェットコースターに激しく揺さぶられる。そんな彼女も、性格に人間味があってまた面白い。
 
作品終盤になって強く感じたのが国籍によるアイデンティティーである。自分はどこに所属し誰を信じればいいのか。「無国籍」というキーワードが強い内容であるからこそ、登場人物たちが自分自身の存在を感じようと必死なのが伝わる。同時に、どこにも所属しない一匹おおかみは自分の存在を感じることにもこんなに苦労するのかと思った。
 
仲間の存在が濃いハントと、忠誠心の置き場所を見失いかけているイルサ。正反対の二人のコントラストが非常に強い。
 
〝スパイアクション映画〟の中でも、観客をことごとく裏切ってくれるほど爽快なハントのストーリーは今の同世代にぜひおすすめしたい。ショート動画を見慣れた私たちが、2時間強の上映時間をスクリーンに集中して見ていられるほどの没入体験ができるに違いない。
 
 


「ミッション:インポッシブル」6ムービー・コレクション
[4K ULTRA HD + Blu-ray セット] 2万5080円(税込み)
※2023年7月現在の情報です。
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 1996, 2000, 2006, 2011, 2015, 2018, 2023 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.
 
 

ライター
堀陽菜

堀陽菜

2003年3月5日、兵庫県生まれ。桜美林大学グローバルコミュミュニケーション学群中国語特別専修年。高校卒業までを関西で過ごし、大学入学と共に上京。22年3月よりガールズユニット「MerciMerci 」2期生として活動開始。
好きな映画は「すばらしき世界」「スピードレーサー」「ひとよ」。幼少期から兄の影響で色々な映画と出会い、映画鑑賞が趣味となる。特技は14年間続けた空手。