「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」より  ©2018 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

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2023.7.19

戦う理由示す〝予知夢〟に驚嘆 シリーズ最高傑作と認定! 「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」

5年ぶりのシリーズ新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」が7月21日に公開される。主演のトム・クルーズの体を張ったアクションは、作品を重ねるごとに派手になり、とどまるところを知らない。第1作から27年、イーサン・ハントはどこから来て、そしてどこへ向かうのか。ひとシネマが、シリーズ全作を解説、見どころを紹介します。最新作鑑賞前の復習にどうぞ!

高橋諭治

高橋諭治

「ミッション:インポッシブル」シリーズはトム・クルーズという絶対的な看板スターの存在感が際立つ半面、一作ごとのテイストにはかなりバラツキがある。第1作のブライアン・デ・パルマからジョン・ウー、J.J.エイブラムス、ブラッド・バードという持ち味の異なる監督たちにメガホンが受け継がれてきたのだから、それも当然だろう。
 

クリストファー・マッカリー監督続投〝2部作〟

ところが第6作「フォールアウト」(2018年)では、前作「ローグ・ネイション」(15年)のクリストファー・マッカリー監督が続投。作風の連続性が保たれたうえに、この2作品には悪役のソロモン・レーン(ショーン・ハリス)や元MI6のイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)が再登場するなどストーリーもつながっている。いわば最新作の「デッドレコニング PART ONE/PART TWO」に先立つ〝2部作〟なのである。
 
「ローグ・ネイション」で描かれた国際的な犯罪組織〝シンジケート〟との激闘から2年後。ロシアのミサイル基地から核兵器の原料となる三つのプルトニウム・コアが盗まれ、イーサン・ハント(トム・クルーズ)に奪回のミッションが下される。しかし〝シンジケート〟の残党であるテロ集団〝アポストル〟もプルトニウムの入手をもくろんでおり、イーサンに疑惑の目を向けるCIAは監視役として敏腕エージェントのウォーカー(ヘンリー・カビル)を送り込んでくる。かくしてIMFの仲間たち、ウォーカーとともにパリへ飛んだイーサンは、収監中である因縁の敵ソロモン・レーンと再び相まみえることに‥‥‥。
 

凱旋門を突っ走る雄姿

言うまでもなく本シリーズの売り物は、命知らずの熱血スパイ、イーサン・ハントが見せる危機一髪のアクションだ。その点、本作の充実ぶりたるやずば抜けている。そのハイライトは、パリの中心部を閉鎖して撮影を敢行した15分間におよぶ中盤のチェイスシーン。正体不明の過激主義者〝ジョン・ラーク〟になりすまして、武器ブローカーの一味に接触したイーサンが、護送中のソロモン・レーンの身柄を拘束しようと試みる場面だ。イーサンが車からバイクへと乗り換えて市街地を猛然と逆走し、凱旋門(がいせんもん)をバックに突っ走る雄姿に目を奪われる。
 
クルーズが毎回挑戦する危険なスタントも満載だ。とりわけ成層圏に迫る高度7620メートルの上空からのスカイダイビング、ヘリコプターの操縦ライセンスを取得して臨んだアクロバティックなヘリ飛行シーンは、「なぜそこまでするのか」とド肝を抜かれること間違いない。
 

スタントコーディネーターの功績大?

さらに特筆すべきは、これらのクルーズが体を張った臨場感あふれる見せ場が、複雑かつ起伏に富んだアクション〝シークエンス〟として設計されていること。これは筆者の勝手な想像だが、「ローグ・ネイション」からスタントコーディネーターを務め、本作ではセカンドユニット監督も兼任したウェイド・イーストウッドの貢献度が高いのではないか。ちなみにイーストウッドは、全編が怒濤(どとう)のアクションで構成されている「デッドレコニング PART ONE」にも本作と同じ役回りで携わっている。
 
複雑化したのはアクションだけではない。イーサンとソロモン・レーンの確執を軸に、敵か味方かわからないウォーカーと彼を差し向けたCIA長官エリカ・スローン(アンジェラ・バセット)、武器ブローカーのホワイト・ウィドウ(バネッサ・カービー)、ソロモンを敵視するイルサ・ファウストらの思惑が絡むストーリーは重層的で、ぼんやり見ていると振り落とされかねないほど入り組んでいる。イーサンと悪党が何らかのキーアイテムをめぐって争奪戦を繰り広げるというシンプルな筋立てのシリーズの他作品より、はるかに複雑な構造になっている。
 

オープニングシーンに注目

重要な伏線となるオープニングシーンも見落としてはならない。大自然のまっただ中でイーサンとジュリア(ミシェル・モナハン)が結婚式を挙げ、永遠の愛を誓おうとしている。その幸福な光景が核爆発で吹き飛ばされるこの衝撃的なシーンは、本シリーズとしては極めて異例のことだが、イーサンの〝夢〟を映像化したものだ。そしてカシミール地方が核攻撃の標的となるクライマックスでは、イーサンと今は〝元妻〟となったジュリアがドラマチックな再会を果たす。つまり冒頭のイーサンの〝悪夢〟は、彼自身とジュリアに絶体絶命の危機が訪れることをほのめかす虫の知らせ、すなわち超自然的な〝予知夢〟だったというわけだ。
 
筆者はこのアイデアに心底、舌を巻いた。イーサンが捨て身のヘリチェイスに身を投じるクライマックスの果てに、それまで複雑怪奇な軌跡を描いてきたストーリーが一点に収束する。「イーサン・ハントは、なぜそこまでして闘い続けるのか」。その答えの一端に触れたとき、筆者は本作をシリーズの最高傑作と認定した。むやみやたらに危険を冒すスーパースパイの、謎めいた心の奥底を垣間見たような感動がそこにある。

 


「ミッション:インポッシブル」6ムービー・コレクション
[4K ULTRA HD + Blu-ray セット] 2万5080円(税込み)
※2023年7月現在の情報です。
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 1996, 2000, 2006, 2011, 2015, 2018, 2023 Paramount Pictures. MISSION IMPOSSIBLE is a trademark of Paramount Pictures.

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ライター
高橋諭治

高橋諭治

たかはし・ゆじ 純真な少年時代に恐怖映画を見すぎて、人生を踏み外した映画ライター。毎日新聞「シネマの週末」、映画.com、劇場パンフレットなどに寄稿しながら、世界中の謎めいた映画、恐ろしい映画と日々格闘している。
 

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