「めくらやなぎと眠る女」

「めくらやなぎと眠る女」 © 2022 Cinéma Defacto – Miyu Prodcutions – Doghouse Films – 9402-9238 Québec inc. (micro_scope – Prodcutions l’unité centrale) – An Origianl Pictures – Studio Ma – Arte France Cinéma – Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

2024.7.26

特選掘り出し!:「めくらやなぎと眠る女」 村上春樹小説、初アニメ化

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「めくらやなぎと、眠る女」「かえるくん、東京を救う」など村上春樹の六つの短編を、音楽家でアニメーション作家のピエール・フォルデス監督が再構築。村上春樹の小説がアニメ化されるのは初めてのことになる。

東日本大震災直後の東京。被害のニュースを見続けていたキョウコは、夫の小村に「もう戻りません」と手紙を残して姿を消してしまう。そんな中、小村は中身のわからない小包を同僚の妹に届けるため、思いがけず北海道へ。同じ頃、同僚の片桐は家で待っていた巨大な〝かえるくん〟から、次の地震を防ぐために闘う自分を応援してほしいと懇願される。

監督が解釈した日本が映像化され、当たり前の風景のなかにほんのわずかに異国感が漂っているのが面白い。日本人のキャラクターが英語を話す違和感も、この作品においては不思議な浮遊感を醸し出す演出に感じられる。揺らぐ線によって表現された非日常的な描写が差し込まれ、登場人物の夢や脳の中にダイブしていく感覚も。希望を失った人が少しだけ回復していく物語には、セラピーのような後味もある。日本語版の演出は深田晃司監督。磯村勇斗らが声優を務めた。1時間49分。東京・ユーロスペース、大阪・テアトル梅田ほか。(細)

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