2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。
2023.12.28
生誕120年小津とカンヌが結ぶ是枝、ベンダース、北野 伊藤弘了
ゆく年編
「怪物」(是枝裕和監督)
「首」(北野武監督)
「PERFECT DAYS」(ビム・ベンダース監督)
「エドワード・ヤンの恋愛時代」(エドワード・ヤン監督)
途方もない傑作と再会の喜び
「怪物」「首」「PERFECT DAYS」はいずれも2023年の第76回カンヌ国際映画祭で上映された作品である。3人の監督を結びつけているのは、今年生誕120年/没後60年を迎える小津安二郎である(小津作品のデジタル修復版も今年のカンヌ「クラシック部門」で上映されている)。是枝裕和とビム・ベンダースはともかく、北野武と小津はただちには結びつかないかもしれないが、北野の「監督・ばんざい!」(07年)の劇中劇のひとつに小津風人情劇「定年」があったことを思い出されたい。
「エドワード・ヤンの恋愛時代」は全国の劇場で4Kレストア版が上映された。一般的には新作とは見なされないだろうが、この途方もない傑作とスクリーンで再会できた喜びを記録として残しておきたい。
23年は自分自身の生活環境の大きな変化もあり、映画館に足を運ぶ機会が激減してしまった。見逃している新作はあまりに多く、10本を選ぶ資格はないと判断したため、今回は新作3本+1本に絞った。
くる年編
「悪は存在しない」(濱口竜介監督) 4月26日公開
「インサイド・ヘッド2」(ケルシー・マン監督) 夏公開
「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督) 公開日未定
心奪われた前作 どんな続編が
「悪は存在しない」はこのところ快作を連発している濱口竜介監督の新作。ベネチア国際映画祭の銀獅子賞を獲得しており、評判は上々だ。いやが応でも期待が高まる。「インサイド・ヘッド」は前作に心を奪われた。そこからどのような続編を紡ぎ出したのか、しかと見届けたい。「バーベンハイマー」騒動で注目を集めていた「オッペンハイマー」の日本公開が決まったことを、ひとまずは喜びたい。
【ひとシネマ的 ゆく年くる年 総まくり2023年】
人生の苦難、心の闇……〝痛み〟引きずった作品たち SYO
面白い作品を満喫 悔いなき1年 高橋佑弥
日本映画に感じた「物作り」の力 洪相鉉
やっと戻った日常 心の琴線に触れた10本 後藤恵子
印象残った 今日的なテーマの良作 井上知大
良作ぞろいの欧州アートハウス系 高橋諭治
「対話」がもたらすつながりと気づき 山田あゆみ
アニメ映画に泣いて笑って きどみ
言語で描けない闇に魅惑された 藤原帰一