「イニシェリン島の精霊」©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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2023.12.28

言語で描けない闇に魅惑された1年 藤原帰一

2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。

藤原帰一

藤原帰一

ゆく年編


「イニシェリン島の精霊」
「コンパートメント No.6」
「対峙」
「別れる決心」
「TAR/ター」
「アシスタント」
「サントメール ある被告」
「熊は、いない」
「ヨーロッパ新世紀」
「枯れ葉」
*公開順

戦争と暴力と民族迫害と性差別

戦争と暴力と民族迫害と性差別に揺さぶられる世界を反映する映画が並んだ。だが、社会を反映するだけでは映画にならない。公開作品の中でも群を抜いた収穫「イニシェリン島の精霊」と「TAR/ター」の2作品は、容易には共感できないキャラクターを俳優のセリフよりも映像と音によって表現することで、善悪で決めつけることのできない奥深く多面的な心の闇を捉えている。

この2作に続く秀作、「サントメール ある被告」と「ヨーロッパ新世紀」も、人種差別や移民迫害を描きながら、そのようなキーワードに押し込めることのできない捉えがたく曖昧な闇に覆われている。言語だけでは描くことができない闇に魅惑される1年だった。

くる年編


「オッペンハイマー」 公開日未定


日米の異なる語り

まだ見ていない映画が多いなかで一点だけ、日本公開がやっと決まったクリストファー・ノーラン監督の新作をお薦めしたい。原爆を開発したマンハッタン計画の責任者の物語であるが、オッペンハイマーの主観映像で一貫していることから、アメリカと日本で原爆投下の語りがどのように異なるかを思い知らされた。

ひとシネマ的 ゆく年くる年 総まくり2023年

人生の苦難、心の闇……〝痛み〟引きずった作品たち SYO
面白い作品を満喫 悔いなき1年 高橋佑弥

日本映画に感じた「物作り」の力 洪相鉉
やっと戻った日常 心の琴線に触れた10本 後藤恵子

印象残った 今日的なテーマの良作 井上知大
良作ぞろいの欧州アートハウス系 高橋諭治

「対話」がもたらすつながりと気づき 山田あゆみ
アニメ映画に泣いて笑って きどみ

生誕120年小津とカンヌが結ぶ是枝、ベンダース、北野 伊藤弘了

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ライター
藤原帰一

藤原帰一

ふじわら・きいち 順天堂大国際教養学研究科特任教授、映画ライター。1956年生まれ。専攻は国際政治。著書に「戦争の条件」(集英社)、「これは映画だ!」(朝日新聞出版)など。「映画を見る合間に政治学を勉強しています」と語るほどの映画通。公開予定の新作や古今の名作の見方を豊富な知識を交えて軟らかく紹介します。

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