この1本:「箱男」 剛腕〝形而上〟を映像化
安部公房が1973年に発表した実験的な小説を、石井岳龍監督が映画化。97年に製作中止の憂き目にも遭っただけに、並々ならぬ熱量だ。筋立てを追えば混乱必至、迷路のような怪作である。 元カメラマンの「わたし」(永瀬正敏)は、すっぽりと段ボール箱をかぶった「箱男」として生きている。存在を消し去り、箱の中から社会をのぞき、妄想をノートに書き付けていた。あるとき古びた病院に誘い込まれると、病に侵された軍医(佐藤浩市)と、その世話をするニセ医者(浅野忠信)、それに看護師の葉子(白本彩奈)が暮らしていた。 物語を要約すれば、〝ホンモノ〟の箱男になろうとする、「わたし」とニセ医者、それに軍医の抗争ということ...