この1本:「逃げきれた夢」 〝不器用さ〟を絶妙に造形
「お嬢ちゃん」「枝葉のこと」と地味ながら個性的な映画で注目される二ノ宮隆太郎監督の第4作。光石研を主演に、光石の故郷北九州で撮影するという構想で始まった作品だ。光石の存在とお国言葉が風景に溶け込んで、中年を過ぎて迷う男のモヤモヤとした気分を、リアルに巧みにすくい取った。 定時制高校の教頭、末永周平(光石)は定年まであと1年、「忘れる病」と診断されて途方に暮れている。行きつけのそば屋に勤める元教え子、南(吉本実憂)には病気のことを漏らしたものの、周囲の誰にも告げられない。周平はしかし人生に区切りをつけるように、周囲との関係を見つめ直す。彼なりに誠実に、しかしとても不器用に。 認知症で施設にい...