この1本:「ラーゲリより愛を込めて」 極限で守る人間の尊厳
第二次世界大戦を題材にした映画はたくさんあっても、シベリア抑留が登場するのは「人間の條件」ぐらいしか思いつかない。本作は辺見じゅんのノンフィクションを原作に、瀬々敬久監督がシベリア抑留を正面から描いている。 終戦直前、満州国にソ連軍が侵攻し、陸軍特務機関員の山本幡男(二宮和也)は混乱の中で家族とはぐれ、捕虜となって収容所に送られる。ソ連担当だった山本はスパイの容疑をかけられるが、帰国を信じて仲間を励まし続ける。 物語の主軸は、抑留生活の中で人間性と自尊心を失わない山本と、その帰りを待つ妻のモジミ(北川景子)ら家族の人間ドラマ。山本は自暴自棄になる捕虜たちを咤(しった)激励し、懲罰を恐れず...