やすだ けん
1973年12月07日 生まれ
映画を読み解く作業 私は映画の音声ガイド制作者です。今はスマートフォンやタブレットにアプリを入れておけば、イヤホンから音声ガイドを聞けるようになっています。メインユーザーは視覚に障害のある人ですが、どなたでもお聞きいただけるためリピート鑑賞の際に活用される方もいらっしゃいます。音声ガイドは、映像を言語化したものなので、映画を読み解く作業とも言えます。ここでは、私自身が音声ガイド制作に携わる中で見いだしたことに焦点を当てながら、作品案内を書いています。 視覚を使わない鑑賞者もしっかり楽しめる 今回の映画は「朽ちないサクラ」。前回の「違国日記」と同様、私自身が音声ガイドナレーションの原稿を...
松田高加子
2024.7.02
12月9日全国公開される「ラーゲリより愛を込めて」は、シベリア抑留研究者なら誰もが知る山本幡男の半生を描いた作品。故辺見じゅんのノンフィクション「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を原作に、フィクションを交えながら壮絶な抑留体験を再現した。「糸」などの大ヒット映画を監督する一方、「菊とギロチン」でドロドロとした人間の業を描いた瀬々敬久監督は、極寒のシベリアから何を表現するのか。「伝えたいことは、厳しい状況でも希望を捨てるなということに尽きます」 絶望の収容所世界 「希望」を描く前提となる絶望の抑留生活はどのように描かれたのか。スターリン時代の収容所文学を読んできた記者にとっては、まずそこ...
萱原 健一
2022.10.11
春男(安田顕)は地元密着型のスーパー「ウメヤ」の万年主任。信頼する店長が急死し、職場や家庭から次の店長と期待されるが、本部から年下のさえない新店長が来てがっかり。店員が商品を盗み、長女(岡田結実)に恋人ができ、憎めないお父さんが一喜一憂するコメディーだ。 つぶやきシローの同名小説の映画化。正直者でお人よし、うまく立ち回るのが不得手な中年男性を安田がユーモアと哀愁を交えて好演。世のお父さん方が「あるある」とうなずきそうな空回りのエピソードが笑いと共感を誘う。ただ、春男は店でも家庭でも脳内の妄想がさく裂。モノローグが多すぎて、うっとうしく感じるほどだ。後半は昇進をめぐるドタバタから一転、娘2人を...
2021.12.16
太平洋戦争では、ラジオ放送による「電波戦」という戦いが日本軍の戦いを支えていた。ナチスのプロパガンダ戦に倣い「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた。そしてそれを行ったのは日本放送協会とそのアナウンサーたちだった。戦時中の彼らの活動を、事実を基に映像化し、アナウンサーたちの苦悩と葛藤、放送と戦争の知られざる関わりを描く。 太平洋戦争の始まりとなるラジオの開戦ニュースと終戦を伝える玉音放送。その両方に関わったのが 天才と呼ばれた和田信賢アナ(森田剛)と新進気鋭の館野守男アナ(高良健吾)だった。1941年12月8日、大本営からの開戦の第一報を和田が受け、それを館野が力強く読み...
原作は、「孤狼の血」や「佐方貞人」「合理的にあり得ない」など、数々のシリーズが映像化されている、大藪春彦賞作家・柚月裕子の同名小説。県警の広報職員がヒロインという異色の警察小説は、親友の変死事件の独自調査を進め、事件の真相と〝公安警察〟の存在に迫っていく主人公の姿を描く。 本作で主人公の県警・広報職員26歳の森口泉を演じるのは、「市子」(2023年)で第78回毎日映画コンクール女優主演賞を受賞し、さらに、「52ヘルツのクジラたち」「片思い世界」と、主演作の公開が続く杉咲花。「ウツボラ」(23年)や「日本ボロ宿紀行」(19年)など多くのドラマ作品を演出し、長編映画は本作が第2作となる原廣利がメ...
世界に絶望し、自殺を図った3人の少年少女。病院で目を覚ますと彼らの身には、不思議な「異能力」が宿っていた。その力は「ヒーロー」と呼ばれる、血統でのみ継がれる「正義の味方」しか持ちえないはずのものだった――。 ©KANEKO Atsushi / KADOKAWA 刊 ©DMM TV
大ヒットを記録した「花束みたいな恋をした」(2021年)や、第76回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞した「怪物」(23年)の脚本家・坂元裕二の最新作は、Netflixとの初タッグとなるオリジナル長編映画。実在する豪華クルーズ船MSCベリッシマを舞台に、ミステリアスな殺人事件と、事件現場にたまたま居合わせてしまった2人が繰り広げるロマンティックコメディ。富裕層の乗客に無心で仕えるバトラーを吉沢亮。ある目的を秘めてクルーズ船に乗り込んだ謎の女性を宮﨑あおいが演じている。「大豆田とわ子と三人の元夫」の演出を手がけた瀧悠輔が監督を務めた。 乗客の理不尽なクレームに、土下座も厭わず対応するその〝プライドのな...
2022年10月1日に、79歳で惜しまれつつこの世を去ったアントニオ猪木。プロレスラーにして実業家、政治家としてリングの内外で伝説的なエピソードを数々残してきた人間・アントニオ猪木に迫るドキュメンタリー。猪木が設立した新日本プロレス創立50周年を記念して製作され、没後1年のタイミングで公開される。 写真:原 悦生 Ⓒ2023映画「アントニオ猪木をさがして」製作委員会
謎の組織SHOCKERから脱走した緑川ルリ子と本郷猛。組織は人体を改造し殺傷能力を強化する「昆虫合成型オーグメンテーションプロジェクト」を進めており、本郷はその最高傑作だった。ヘルメットをかぶることによって超人的な力を発揮する。計画を阻止しようとする政府の後ろ盾を得た本郷と緑川は、組織が次々と放つ刺客と対決する。 監督、脚本は、「エヴァンゲリオン」4部作の企画・原作や、「シン・ゴジラ」(2016年)の総監督、脚本を務めた庵野秀明。石ノ森章太郎の〝原点〟をリスペクトしつつ、新たなオリジナル作品として製作。本郷猛(仮面ライダー)を演じるのは池松壮亮、緑川ルリ子を浜辺美波、⼀⽂字隼⼈(仮面ライダー...
第二次世界大戦後の1945年、厳冬のシベリア。零下40度の寒気の中、わずかな食料で過酷な労働を課せられ死者が続出する収容所(ラーゲリ)に、その男・山本幡男はいた。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます」。絶望する抑留者たちに、山本は訴え続けた。山本は日本にいる妻と4人の子どもと一緒に過ごす日が訪れることを信じ、劣悪な環境にいる仲間を励ました。その行動と信念は、日本人捕虜たちの心を次第に溶かしていく。 終戦から8年後、ようやく山本に妻からのハガキが届く。「あなたの帰りを待っています」。1人で子どもたちを育てている妻を思い、山本は涙を流さずにはいられなかった。...
降旗康男監督の遺作。 富山の漁港で殺人事件が起きる。刑事の四方篤(岡田准一)は容疑者の田所啓太(小栗旬)、被害者の川端悟(柄本佑)が25年ぶりに再会。四方は過去のある秘密に向き合うことになる。
幾度となく関係が途切れても必ずつながる親子の半生を描いた映画「とんび」。重松清の小説を基に映画「64 -ロクヨン-」などの瀬々敬久が監督し、不器用な父親の市川安男(ヤス)を阿部寛、その息子の旭(アキラ)を北村匠海が演じる。 ぶっきらぼうで勘違いされやすい日本一不器用な男・ヤスと、母を事故で亡くして以来、町の人々に助けられながら育った息子・アキラの物語は、不朽の名作として愛され、これまでに2度、映像化された人気作。 ©2022『とんび』製作委員会