時代の目:「52ヘルツのクジラたち」 描き出される救済への希望
町田そのこの本屋大賞受賞作を映画化。題名は、他のクジラと鳴き声の周波数が違うため、誰にも声が届かない孤独な個体のことという。 地方の一軒家に越してきた貴瑚(杉咲花)は、母親に虐待されている少年と出会う。声が出ない少年を「52」と呼び、親身に世話をするようになった。貴瑚もかつて、母親から虐待され義父の介護を押しつけられていたが、アン(志尊淳)によって人生をやり直すきっかけを得たのだ。貴瑚が52を守るために奔走する現在と、アンが貴瑚を救った過去を行き来する。 児童虐待やヤングケアラーに加えLGBTQなど性的少数者と、社会問題を物語に詰め込んだ。小さな世界に苦しむ人ばかりが集まる展開は不自然にな...