てらじま しのぶ
1972年12月27日 生まれ
原作は山田風太郎の同名小説。晩年に失明の苦難に見舞われながらも、28年の歳月を費やして「南総里見八犬伝」を完成させた滝沢馬琴(役所広司)の情熱を、親友の葛飾北斎(内野聖陽)との交流を軸に描く。さらに、八つの珠(たま)を持つ8人の剣士が宿命に導かれて悪に立ち向かうおなじみの物語を、視覚効果とアクション満載で映像化。〝実〟と〝虚〟のパートが交互に展開していく2部構成である。 やはり本作の新味は〝実〟のパートにある。馬琴の壮大かつ奇抜な想像力に舌を巻く北斎、そんな北斎がさらりと描いてみせる挿絵の下描きに刺激を受ける馬琴。憎まれ口をたたきつつも、互いに敬意を抱く2人の友情を、役所と内野ががっぷり四つ...
2024.10.25
毎日映コンでは、第58回「赤目四十八瀧心中未遂」と第65回「キャタピラー」で女優主演賞を2度受賞。「キャタピラー」ではベルリン国際映画祭で最優秀女優賞にも輝き、押しも押されもせぬ実力者である。母、富司純子も第54回で田中絹代賞、毎日映コン史上初の母娘受賞となった。。「光栄ですし、すごくうれしい。母が映画に生きる姿を見ながら、スクリーンに顔が大きく映ることを夢見てきました」 世界に置いていかれないように 田中絹代が亡くなった年にまだ5歳で、もちろん直接の思い出はない。しかし「西鶴一代女」はことあるごとに見直しているという。 「これぞ日本映画。絹代さんは監督もプロデューサーもさ...
勝田友巳
2023.2.06
「第77回(2022年)毎日映画コンクール」の各賞が決まった。日本映画大賞は「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)で、監督、女優主演、撮影、録音各賞を合わせて5冠。日本映画優秀賞は「夜明けまでバス停で」(高橋伴明監督)が受賞した。 表彰式は2月14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで開催する予定。 第77回毎日映コン各部門の候補作・者は こちらから 第77回毎日映コン受賞者 喜びの声「想像こそ映画の魅力」三宅唱監督 「ケイコ」は監督賞、女優主演賞など5冠 日本映画大賞 「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督) 日本映画優秀賞 「夜明けまでバス停で」(高橋伴明監督) 外国映...
ひとシネマ編集部
2023.1.18
第77回毎日映画コンクールの受賞作・者が決まった。2022年の公開作には、コロナ禍で製作の中断や公開延期を強いられた作品も多く、内容にも直接、間接の影響がうかがえた。受賞結果には、困難の中で表現に挑む作り手の強い意欲が感じられた。 第77回毎日映画コンクール授賞結果一覧 「ケイコ 目を澄ませて」が5冠 コロナ禍でも表現への思い強く 日本映画大賞の「ケイコ 目を澄ませて」は、実在の女性をモデルとした人間ドラマ。生まれつき耳の聞こえないケイコがジムに通い、プロボクサーとしてリングで戦う姿を、ボクシング映画らしからぬ静けさで描いた。 聴覚障害を持ちながらプロボクサーとしてリングに立った...
1966年、小説家の長内みはる(寺島しのぶ)と白木篤郎(豊川悦司)は、パートナーや妻子がありながら男女の仲になる。篤郎は家庭では妻の笙子(広末涼子)の料理を褒め、幼い娘たちを可愛がる夫であり、父だった。 作家・井上荒野が、父である井上光晴と母、若き日の瀬戸内寂聴との関係を描いた同名小説を広木隆一監督が映画化。監督と組んできた荒井晴彦が小説を忠実に脚本化し、原作の心情描写がセリフに織り込まれている。言葉で語られるシーンも多いが、それぞれの〝顔〟が伝えるものが多い。みはるが出家のために剃髪(ていはつ)する時の穏やかなほほえみや、白木家を訪れた帰りのタクシーで見せる涙。笙子がひとりでお茶を飲むシー...
2022.11.11
初産の赤ん坊を捨て、流浪の人生を送る少女リナ(芳根京子)が、エマ(寺島しのぶ)という女性と出会い、遺体を生前の姿のまま保存する技術を学び始める。一方、エマの弟の天音(岡田将生)は、不老不死の研究に没頭。やがて天音と引かれ合うリナは、人類初の〝永遠の命〟を得た存在となるが……。 中国系米国人作家ケン・リュウの短編小説「円弧」の映画化である。30歳の若さを保ったまま年を重ねていく女性の数奇な人生を通して、生きる意味という根源的なテーマを探求した。日本映画では珍しい思索的なSFだが、その根底には東洋的な死生観が流れ、決して難解ではない。しかし主人公が終盤にある決断を下すまでの〝心〟がなかなか見えて...
2021.6.24
男女交際禁止の校則が制定された超エリート高校を舞台に、恋愛が禁じられた世界で傷つき、もがきあらがう生徒たちの様子を映し出す。 生徒同士のリーク合戦、理不尽な校則を押し付ける学校側との前代未聞(みもん)のバトルロワイヤルが始まる――! Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」は世界独占配信中 Netflix
里見家の呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人の剣士たちの運命を描く「八犬伝」の〝虚構〟の世界と、作家・滝沢馬琴と挿絵を頼まれた浮世絵師・葛飾北斎の奇妙な友情を通じて創作の真髄に迫る〝実話〟の世界。失明しながらも28年の歳月をかけて「八犬伝」を書き上げた馬琴の苦悩と葛藤、執念が生んだ世界を壮大なスケールで描き出す。 主人公の滝沢馬琴を役所広司、葛飾北斎を内野聖陽、八犬士の運命を握る伏姫(ふせひめ)を土屋太鳳、馬琴の息子・宗伯(そうはく)を磯村勇斗、宗伯の妻・お路(おみち)に黒木華、馬琴の妻・お百(おひゃく)を寺島しのぶが演じる。監督は「ピンポン」(2002年)や「鋼の錬金術師」シリーズ...
「新聞記者」(2019年)や「余命10年」(22年)、「最後まで行く」(23年)を手がけた藤井道人が監督・脚本を務める。大災害で亡くなった人の視点で残された人への思いを描いた愛の物語。 瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)は、離ればなれになった息子・良を捜していた。道中で青年・アキラ(坂口健太郎)や、元ヤクザの勝利(横浜流星)、元映画プロデューサーのマイケル(リリー・フランキー)とその仲間たちと出会い、自分がすでに死者となっていること、そして今いる世界がこの世に未練を残した者たちが集まる特別な場所だということを知る。現実を受け止めきれない美奈子だったが、月に一度死者たち...
「12ヶ月のカイ」(2020年)のメガホンを執った亀山睦木監督が自ら単身で国際映画祭へ持ち込むまでの記録と共に、寺島しのぶ、清水崇、北村龍平監督といった、日本を代表する役者や監督たちのインタビュー映像を収めたドキュメンタリー。 亀山監督は「12ヶ月のカイ」を110カ所以上もの海外の映画祭へ応募し、現地の観客の声を聞くためにアメリカからヨーロッパまで足を運ぶが、英語力や日本映画業界の特殊性など、日本人ゆえに感じる壁を克明に映し出す。併せて、 合間に挟まれる 映画関係者へのインタビューで、若手の監督や俳優のリアルな苦悩と、 寺島しのぶや北村龍平監督ら 世界で活躍する日本人の経験が 彼ら自身の言葉...
作家・井上荒野が、父である井上光晴と母、若き日の瀬戸内寂聴との関係を描いた同名小説を広木隆一監督が映画化。 1966年、小説家の長内みはる(寺島しのぶ)と白木篤郎(豊川悦司)は、パートナーや妻子がありながら男女の仲になる。篤郎は家庭では妻の笙子(広末涼子)の料理を褒め、幼い娘たちを可愛がる夫であり、父だった。 ©2022「あちらにいる鬼」製作委員会
三ツ瀬町は、天界と地上の間にあって、死者の魂が肉体に戻るか天界に行くかを決めるための場所。魂が滞在する旅館「天間荘」は、おかみの恵子(寺島しのぶ)の元、娘ののぞみ(大島優子)とかなえ(門脇麦)の姉妹が切り盛りしている。交通事故で脳死状態となって三ツ瀬にやって来たたまえ(のん)は、のぞみとかなえの異母妹だった。たまえは天間荘で働き始め、現世に残した人たちへのさまざまな思いを知ることになる。やがて三ツ瀬が存在する理由が明らかになっていく。 ©2022 髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会
チャン・イーモー監督が熱望した高倉健主演の中国を舞台にしたロードムービー。長らく民俗学者の息子・健一(中井貴一)と疎遠になっていた剛一(高倉健)。嫁(寺島しのぶ)から連絡があり見舞いに行くと、健一は重病で伏せっていた。そして嫁から、中国の有名な俳優リー・ジャーミンと交わした約束を果たせず悔やんでいると聞く。剛一は息子の代わりに彼が志なかばにしている仕事をやり遂げようと、無謀にも一人で中国に渡った(追悼特別展「高倉健」図録より) ©️2005 Elite Group(2004) Enterpries Inc.
重松清原作の映画化。中年サラリーマン田中信(浅野忠信)は2人の子持ちの女性奈苗(田中麗奈)と再婚した。奈苗の妊娠により、長女の薫(南沙良)は本当の父・沢田(宮藤官九郎)に会いたいと言い出す。DVで別れた沢田と合わせたくない2人と、娘の間には深い溝が出来ていく。
ギャンブル好きのダメ男ゴウは借金に追われ、妻淑子と娘の歩にも愛想を尽かされている。暇さえあれば親友の経営する名画座に入り浸っている。しかしゴウは若かりし頃、撮影所で監督を目指し、大監督やスター女優とともに映画を作っていた。助監督として夢を追い、淑子との出会った50年前の青春時代と、自作の古い脚本を孫と書き直すことで生きがいを取り戻す現代を行き来して描く、家族と友情の物語。松竹映画100周年記念作。
スーパーの店長・青柳(松坂桃李)が女子中学生の万引きを目撃、後を追うと中学生が道路に飛び出し車にひかれて死んでしまう。中学生の父親・添田(古田新太)は、常軌を逸した執拗(しつよう)さで青柳を責め続ける。争いの様子がネットやテレビでさらされ、双方に非難が浴びせられるようになった。青柳は次第に追い詰められていく。オリジナルの脚本で、不寛容な時代の罪と許しを描く。 ©️2021「空白」製作委員会