「あちらにいる鬼」
1966年、小説家の長内みはる(寺島しのぶ)と白木篤郎(豊川悦司)は、パートナーや妻子がありながら男女の仲になる。篤郎は家庭では妻の笙子(広末涼子)の料理を褒め、幼い娘たちを可愛がる夫であり、父だった。 作家・井上荒野が、父である井上光晴と母、若き日の瀬戸内寂聴との関係を描いた同名小説を広木隆一監督が映画化。監督と組んできた荒井晴彦が小説を忠実に脚本化し、原作の心情描写がセリフに織り込まれている。言葉で語られるシーンも多いが、それぞれの〝顔〟が伝えるものが多い。みはるが出家のために剃髪(ていはつ)する時の穏やかなほほえみや、白木家を訪れた帰りのタクシーで見せる涙。笙子がひとりでお茶を飲むシー...