真実は一つではない 「流浪の月」 後藤恵子
① 「流浪の月」(李相日監督) ② 「ベイビー・ブローカー」(是枝裕和監督) ついこの前2022年が始まったと思ったら、もう下半期に突入し、上半期を振り返る時期になっていることに愕然(がくぜん)としている。あまり本数を見られていないため、イレギュラーな形で恐縮ながら2本を挙げた。 「ベイビー・ブローカー」 © 2022 ZIP CINEMA CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED 時代に思いはせるきっかけに 前者は「未成年の誘拐」、後者は「子供の養育放棄と売買」が、直接的なテーマ。どちらの作品もヘビーなテーマを扱っているけれども、共通している裏テーマは、「世に出ている事実が必ずしも真実とは限らない」であると個人的に思う。どんな物事も当事者のひとりひとりに真実がある、という当たり前ではありながら、普段あまり念頭に置いていなかったことを映像で突き付けられた感があり、現在、世界のどこかで起こっている問題や争いに思いをはせることになるという、ある意味時代を映し出すきっかけになるような作品だと思う。そして、2022年後半はもっと劇場に足を運んで、映画界を盛り上げる一助になりたいと反省しています(笑)。

後藤恵子
2022.7.09