特選掘り出し!:「MEMORIA メモリア」 〝音〟の起源をたどる旅路
「ブンミおじさんの森」のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が、初めて母国タイの外で撮った作品だ。舞台は南米コロンビア。ある夜、原因不明の衝撃音によって目覚めた英国人女性ジェシカ(ティルダ・スウィントン)。それ以来、不眠に悩む彼女は、〝音〟の起源をたどるようにして田舎の森に足を踏み入れていく。 公園などで突然鳴り響く衝撃音は、ジェシカの周囲の人には聞こえない。それは病気のせいか、超常現象か。映画は答えを示さず、催眠術にでもかかったようにさまようジェシカの旅路を映し出す。 静謐(せいひつ)な長回しが連ねられ、物語性も乏しい映像世界は、それこそ観客を眠りに誘いかねない。しかし理屈でのみ込むこと...