第5回 「影武者」撮影秘話「勝新だったら……」 間近にみた黒澤明
――「影武者」は、黒澤監督が「どですかでん」以来10年ぶりに日本で製作する作品だった。武田信玄の死を隠すため、弟信廉(のぶかど)らが立てた影武者の運命を描く。当初、勝新太郎主演で企画されていたが、準備中に自身も監督経験のある勝と黒澤監督の演出方針が対立し、勝が降板。仲代達矢に交代した。 はじめは「乱」を作ろうと思ったんだけど、東宝が「今の時代、こんな映画を撮っても客が入らない」と言うものだから、じゃあ客が入るような作品を作ろうということになって書いたのが「影武者」の脚本(ホン)なんです。信廉が兄さんにそっくりなんで影武者をやっていたという話があった。それをヒントに話を作っていった。 ...
神保忠弘
2023.11.30