ひとシネマ1周年記念オンライントークの後の記念撮影 左から堀陽菜さん、和合由依さん、リズムさん 撮影:山田あゆみ

ひとシネマ1周年記念オンライントークの後の記念撮影 左から堀陽菜さん、和合由依さん、リズムさん 撮影:山田あゆみ

2023.3.22

映画を文字で書いてみようという人がもっと増えたら!Z世代と語る映画エッセイの書き方

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山田あゆみ

山田あゆみ

ひとシネマ1周年記念オンラインイベントが、3月5日に行われた。第1部では、「教えてください、関口裕子の映画エッセイを書いてみよう!」と題して、元キネマ旬報編集長の関口裕子さんが若手ライターの質問に答えた。
ひとシネマライターとして、今回参加したのは3人。ダンサー兼ユーチューバーとして活動中のリズムさん。アイドルグループMerciMerciのメンバーで、現役の大学2年生の堀陽菜さん。そして、東京2020パラリンピック開会式出演の経歴を持つ、現在中学3年生の和合由依さん。
 
 関口「教えてくださいという問いに答えられるほど、大それた存在ではありませんので、若手ライターのみなさんと同じ仕事をする者としてお話しできればと思います。文章で映画を伝える楽しさ、大切さが、映画好きな人、そうではない人も含めて広く伝わっていくよう、貢献できればと思っています。ではまず、皆さんがこの1年文章を書いてきて感じたこと、思ったことをお願いします」
 
リズム「ひとシネマで記事を書いて、テーマとなる映画についてより知ることができて、もっと映画を好きになれていると感じています」
 
堀「映画やドラマが昔から大好きで、アイドルや役者の仕事にやりがいをもっています。その一方で、学生の頃から国語が苦手で、文章を書くことに苦手意識があるので、自分の文章に自信が持てるように頑張りたいです。」
 
和合「会って話して自分の気持ちを伝えるのではなく、文字にして自分の気持ちを残すのがライターの仕事なので、感情の伝え方が違うのに苦戦しています。」
 
まずは、それぞれのライターが書いた記事を読んだ上で、関口さんがアドバイスや感じたことを話していく。
 

自分にしかない強みを打ち出そう

関口さんは、ダンサーのリズムさんに対して、ダンスの知識や経験があるので、その独自の視点で文章を書くと良いのではないかとアドバイスを送る。

リズムさん 撮影:勝田友巳

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 関口「ダンスのことを書く前に、映画の説明を書こうとしてその部分が長くなるジレンマに陥っているのではないかなと感じました」
リズム「確かに僕の文章の癖があると感じていて、改めて自覚しました」
関口「今は、文章の細かいテクニックではなくダンサーとしてリズムさんが、経験・知識を文章に生かすことが大事だと思います。映画の全体像を読者に伝えることよりも、ダンスシーンやダンスの構成の気になったところをまずピックアップしてみて。そのどこがすごいのか、どのように興味をもったのか、その理由を説明してみましょう。そうすると、リズムさんにしか書けない文章になると思います」
 
ダンスジャンルの映画の中では「ユー・ガット・サーブド」や「ライズ」が好きだと言うリズムさん。ダンサーとして、独特な視点で映画を見ていることを明かした。
リズム「僕は、本編だけでなくリハーサルシーンの映像も見て、ワンシーンにかけている時間を考えます。ダンスの振り付けは、体で表現するもので、通常は文字におこすことはないので、そういった難しさを感じています」
関口「確かに難しいと思います。振り付けを説明するのではなく、ダンスを踊っている登場人物の心情を考えながら書いてみるといいかもしれません」
 

 堀さんは引き付ける表現がうまい

関口「堀さんの文章は、演じているキャラクターや俳優の心情に特化して書いているところが面白いなと感じました。ご自身の役者の仕事の役に立っているのではないかと思いました」

堀さん 撮影:勝田友巳
 
また、関口さんは堀さんの文章について、記事のはじめにキャッチーな言葉を使い、読者を引き付けるのがうまいと評価する。

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 関口「まずは、読んでもらわないと伝わりません。その点、堀さんはこの先何があるんだろうと思わせる書き方がうまいと思います。一方で筆が走り過ぎて文章の着地点を見失うくせがあるようにも感じました。必ず言いたかったことに戻るよう心がけると、さらに良い文章になると思います。とてもユニークな視点で映画を見ていて、読者にとって発見があると思うので、そこに至るまでを説明できるとより読者に深く伝わる文章になると思います。実は私も苦手なのですが、何度も自分に問いながら書いています。堀さんには絶対できると思うので、自分が書きたいことを深く見つめて、書いてみてください」
 
さらに関口さんは、堀さんの記事について、書きたい気持ちはあっても、苦手意識のあるジャンルがあるのではという分析をする。
 
関口「『キューティ・ブロンド』(01年)の記事は、スッと入りこめて読みやすかったです。Y2Kファッションの話やZ世代の感じ方を知ることができ、読者にとって映画プラスアルファの情報を提供できていると思います。一方で、書きたいけれど苦手意識があるジャンルに対しては、思いが募るほど、着地点を見失ってしまっているように思います。自分が書きたいことを俯瞰(ふかん)した上で構成できると、面白い記事が書けるのではないでしょうか」
堀「話の着地点については、本当におっしゃる通りです。一歩引いてどこに着地するのか考えられるようになりたいです。」
関口「難しいですよね。やり方はいっぱいありますが、こう思った、と先に言ってしまうことも一つの手です。後からその理由を説明していくといいです」
堀「肉付けしていく感じですね」
 

今この時しか書けない言葉を追求する

和合さんの記事について関口さんは、「自分が受け取ったものはなにか、というのを大事にして、今の和合さんにしか書けないものが書けている」と評価した上でアドバイスする。

和合さん 撮影:勝田友巳

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関口「和合さんは感受性が豊かで、いろんなことを考えながら見ているのがとても良いと感じています。だからこそもっと自分の言葉で書いてみてもいいのではないでしょうか。書いた文章をもう一度読んで咀嚼(そしゃく)してみて、本当に書きたかった言葉はこの言葉なのか、と確認してみてはどうでしょうか。今の自分の気持ちにフィットしている表現なのか追求してみると、今しか書けない言葉を選べると思います」
和合「確かに、自分が書いた文章を読み返したとき、これで完成していいのだろうかと感じていました。自分では気付けない細かい部分を、関口さんに見つけていただきました」
 
続いて、ライター3人の質問に関口さんが回答していく。
 

メモを取りながら映画を見る

リズム「映画のシナリオを書いてしまい、ワンパターンになってしまいます。読者が離れない文章の構成を、教えてください」
関口「映画を見終わった後に、その映画が何を表現したかったのかというのを、ひとことで言えるように、いろんな映画で試してみたらどうでしょう。その中で新たな発見があったりします。この映画ってこういう映画だったよな・・・・・・というのを自分に問うのもいいと思います」
 
リズム「専門的なことに興味を持ってもらえるように、文章で興味をひく方法はありますか?」
関口「YouTubeでよくある、ダンス解説動画のような感じを意識してみてはどうでしょうか。リズムさんが気になったシーンだけでも細かく、かみ砕いて解説してみましょう」
 
リズム「記事を書く前提で見る場合、客観的にもしくは主観的に見るか、どちらがいいでしょうか」
関口「私の場合は、メモをしながら見ています。書いているときは無意識で、後でメモを読むと思いがけない気付きがあります。そうやって、自分の感想を客観的に見てみると面白いですよ」
 
リズム「自分の特徴を生かしつつ、構成も整えなければいけないですが、どちらを優先したらいいでしょうか」
関口「リズムさんの場合は、そしてひとシネマのように若いライターを育てたい場がある前提で言うと、まずは形にとらわれず、自分にしかできないという点を追求してはいかがでしょうか。新聞だったら字数制限がある中で情報を入れなければいけないし、雑誌やWEB上でも媒体側が対象とする読者の読みやすさを考慮した上で定型が存在しています。ですが、今後その常識が大きく異なっていくかもしれない。今すぐ仕事として、定型で書くことを求められていないのであれば、自分の強みを追求してみてはどうでしょうか」
 

文章を書く上ですごく大切なのは経験値を増やすこと

和合「文章を書くうえで、一番大切だと思うことは何ですか。」
関口「まず、何を書きたいかを明快にすること。また、異なった面で言うと、さまざまな経験をしていくことです。映画をたくさん見ることや、いろんな人と話したり、本を読むことなど、いろいろなことが自身の肉となり血となっていきます。経験値を増やすことは、文章を書く上で大切だと思います」
 
和合「キネマ旬報の編集長の頃の、仕事のやりがいを教えてください」
関口「編集長時代よりも編集部の時のほうが、仕事は楽しかったですね(笑)。私は小さいころから映画に関わる仕事に就きたいと思っていたので、映画雑誌という形で映画の仕事に就けたことはうれしかったです。」
 
和合「ライターという仕事は、関口さんご自身にどういった影響を与えていますか?」
関口「作った本や書いた原稿を売って対価を得る仕事なので、自分が書いたものを読みたいと思う読者がいるかということをいつも考えながら仕事をしています。仕事の風情を絵にすると、機を織る鶴のような感じです。自分の羽を抜いて作り上げているようなイメージです」
 
和合「映画を見るときに心がけていることはありますか」
関口「私の場合は、先入観を持たないように、細かい情報を入れずに見るようにしています。何も考えずに見て、そこから気になったものについて原稿にしていく。そういう書き方もあると思います」
 

執筆と距離を置くことの大事さ

堀「文章の締めくくりに迷うことが多く、何回も書いては消してを繰り返しています。新鮮味のある締めくくりにするにはどうしたらいいでしょうか」
関口「書いたり消したりしているのは、書きたいものや表現を探しているからこそ。もうそれが正解じゃないかと思います。分からなくなって悩んだときには、一旦離れてもう一度向き合ってみると、咀嚼(そしゃく)できることもあるのではないでしょうか」
 
堀「改行や空間を使った文章が好きなのですが、改めて自分の文章を読み返したときに読みづらくなっていると感じたことがあります。どのようにしたらよいでしょうか」
関口「改行を利用した書き方は、ブログのように自分で空間作りができる場であれば良いと思います。例えば、ひとシネマだと段落を作った構成になっています。自分以外の記事が載っている媒体で記事を書く場合であれば、他の記事の書き方と構成を合わせた方が読者は読みやすいのではないでしょうか」
 
堀「周りの魅力的な文章が並んでいるのをみて、自分の文章に個性がない気がして、自信がなくなることがあります。そんなとき関口さんはどうしますか?」
関口「一旦遠ざかります。一回書くことから離れてみて、自分がやりたいことってなんだろうって考えてみる。すると、あ、私はこんなことを書きたかったんだ、と気付くこともありますので」
 
個性あふれる3人のライターそれぞれに、今後の指針となるアドバイスを行った関口さん。関口さんからの指摘や提案を、ライターそれぞれが真剣に受け取り、笑顔も交えて和やかな1時間となった。

3人で記念撮影 撮影:勝田友巳
 
最後に関口さんが、「今回は皆さんとお話ができてうれしかったです。この先に映画を文字で書いてみようという人がもっと増えて、さらにこういう機会が作れたらとてもうれしいなと思います」と締めくくり、第1部が終了した。

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ライター
山田あゆみ

山田あゆみ

やまだ・あゆみ 1988年長崎県出身。2011年関西大政策創造学部卒業。18年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを開催。「カランコエの花」「フランシス・ハ」などを上映。映画サイトCinemarcheにてコラム「山田あゆみのあしたも映画日和」連載。好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を見る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中。

カメラマン
ひとしねま

山田あゆみ

カメラマン
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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