チャートの裏側:痛切に思う自身の生き方
映画が終わった帰りの道すがらも涙が止まらなかった。映画に関連して、一昨年亡くなった自身の母のことを思い出したからである。山田洋次監督の「こんにちは、母さん」だ。東京・向島で足袋店を営む母と、大企業で要職につく息子を中心に描く。人の生き方の話である。 人の生き方とは何か。90歳を超えた山田監督は、これまで長きにわたって、そのことを描き続けてきた。本作は、そこから一歩も二歩も踏み出している。母と息子の関係性の中に、ちょっとした距離がある。うまく、かみ合わない。修復されたように見えて、そうはならない。 息子はリストラの当事者だ。人を切る側だが、母は言う。「切られるほうが良かった」。息子は「切る」...