チャートの裏側:ひとごとではない「暗転」
2月1日午後、東京都内のテアトル新宿に赴くと、満席で入れなかった。長塚京三主演の「敵」である。毎月1日は割引デーだから、少し首をかしげた。年齢層が高い作品と踏んでいた。割引料金があるシニア層は、1日を優先しなくてもいい。客層の幅が広がっているらしい。 評判どおりの素晴らしい作品だった。老いた元大学教授の話である。妻を亡くし、代々受け継ぐ格式ある家で1人暮らす。ところが、その淡々とした日常がしだいに変質していく。「敵」がやって来たのだ。以降、彼の現実と夢、妄想が錯綜(さくそう)するが、あることに気づかされる。 元教授は「家」を守ろうとして、窮地に陥るのではないか。「家」に象徴されるのは、国の...