由宇子の天秤 揺らぐ真実、正義の危うさ
由宇子(瀧内公美)はドキュメンタリーの若手監督だ。ある地方都市で起こった女子高校生いじめ自殺事件を取材中の彼女は、テレビ局からの修正要求に反発しながら真相に肉薄していく。そんな折、父親の政志(光石研)が経営する学習塾で問題が発生。映像作家として自らの正義を貫いてきた由宇子は、重大な選択を迫られる。 ベルリン国際映画祭パノラマ部門などに出品された春本雄二郎監督の長編第2作。ドキュメンタリー制作の内幕を通して現代社会や人間の闇に切り込み、〝真実〟の不確かさや〝正義〟の危うさをあぶり出す。そんな骨太のテーマに加え、予測不能の脚本とスリリングな描写力が際立つ快作である。 取材対象に寄り添う由宇子は...