親密な他人
シングルマザーの恵(黒沢あすか)は、突然行方不明になった息子心平(上村侑)の帰りを待っていた。ある日、掲示板に心平の情報があるという青年雄二(神尾楓珠)が現れ、息子の持ち物を渡される。恵は住む家のない雄二を自分の部屋に招き入れる。 母性の深遠と大人の女性の奥底にある狂気をえぐり出すような演出に、「オレオレ詐欺」が持つ母子の関係性と現代性を絡ませた。恵と雄二のゾクゾクするような接触に身を乗り出し、黒沢がしだいにあらわにするエロチシズムと女性性の底知れぬゆがみに翻弄(ほんろう)される。恵のアパートのほとんど装飾のない白い壁、家電の響く音などが内面を浮き彫りにし、狂信的な空気感が部屋中に立ちこめる...
ひとシネマ編集部
2022.3.03