この1本:「月」 見る側の覚悟を問う
石井裕也監督は2016年の相模原障害者施設殺傷事件を映画化したいという思いを抱き続け、辺見庸は小説「月」を上梓(じょうし)した。長年の辺見ファンという石井監督は「月」の文庫版あとがきを書き、「月」の映画化を模索していた故・河村光庸プロデューサーがその文章を読んで、石井監督に話を持ちかける。かくして石井監督が「覚悟を決めた」と取り組んだのがこの映画である。もとより事件の映画化に物議はあろうし、その描き方に反発する向きもあろう。しかし映画が投げかける問いは根源的で、見る側の覚悟を問うのである。 森の中にある重度障害者施設「三日月園」に職を得た元小説家の洋子(宮沢りえ)は、同僚の陽子(二階堂ふみ)...