この1本:流浪の月 生身で示す静かな激情
李相日監督の映画は、すべてが濃い。「悪人」「怒り」と人間の奥底に渦巻く激情を解剖してきたが、凪良ゆうの小説を映画化した6年ぶりの新作では、「禁断の関係」が成就されるまでを密度と粘度高く描く。剛腕に圧倒されること必至である。 大学生の文(松坂桃李)は、公園で行き場をなくしていた10歳の更紗(さらさ)(広瀬すず)を連れ帰り、しばらく共に暮らした後で誘拐犯として逮捕される。15年後、更紗は婚約者の亮(横浜流星)と暮らしていたが、ある日偶然入ったカフェで文と再会。文への思いを遂げるため、亮を置いて文の隣の部屋に転居してくる。 世間的には幼児性愛者の誘拐犯とその被害者である文と更紗だが、互いをかけが...