「ゆきてかへらぬ」 芸術と恋に葛藤する若者たちの潔い生きざま
大正末期の京都。20歳の駆け出し女優、泰子(広瀬すず)は、17歳で学生の中原中也(木戸大聖)に出会い、ひかれあって東京にむかう。23歳の学生、小林秀雄(岡田将生)は中也に詩人としての才能を見いだし、中也もそれを誇りに思う。芸術を論じ合う2人の姿を見て、泰子は複雑な気持ちになるが、秀雄も泰子に魅せられていく。 田中陽造の傑出した脚本を根岸吉太郎監督が映画化。赤い番傘を差した中也が、黒い瓦屋根の間の路地を歩いてくるシーンなど冒頭から目を見張った。男女の入り組んだ三角関係だが、感情のやりとりを生々しく描出。嫉妬や反発、相互の距離感が愛情の交歓だけでなく、時代をも映し出す。作品の根底には、それぞれが...